「庭の千草」狂詩曲
ーー何があった? 宗月の怪我の後……日本で何が

BAL中に、詩月の演奏する「夏の名残りの薔薇」が響き渡る。

聞いている分には穏やかで、切なく難しさを感じさせない僅か10分足らずの曲だ。

なのに、指の先端まで神経を集中させなければ弾けない繊細さが要求される。

演奏しながら何度も指が吊りそうになる超絶技巧のオンパレード。

詩月はそんな難曲を情感豊かで艶やかに表現し、演奏しきった。

「おいおい、ミヒャエル!? 泣いているのか?」

客が立ち尽くしたミヒャエルの肩を叩き、ミヒャエルの顔をしげしげと見つめて言った。

「えっ……」

ミヒャエルは自分の頬に手を当てる。

「何で?」

ミヒャエルは手でゴシゴシと頬を拭いた。

「ミヒャエル? 声をかけてくれればよかったのに」

詩月がくるりと振り返った。

「気持ち良さ気に演奏していたからな」

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