「庭の千草」狂詩曲
ミヒャエルは咄嗟に答えた。

「そうだな。『夏の名残りの薔薇』をこんな風に弾いたのは初めてだな。母が学生の頃得意な曲だったらしくて……母が時々、弾いていたんだ。上手く動かない指で、」ゆっくりと」

詩月は椅子に座りながら、クレアが演奏している姿を思い浮かべた。

「教室でひっそりと、泣いていたのかもしれない。思い出すから僕は苦手だ」

ミヒャエルは苦手な曲と聞いて、何が苦手な曲かと思った。

「お前に苦手な曲があるのか」

思わず口にした。

「可笑しなことを言うね。苦手な曲、誰にだってあるだろう。今日は気持ち良く演奏ができた。指がまだジンジンする」

詩月はヴァイオリンをケースにしまうと、ピアノを振り返った。

「ビアンカ、付き合わせてすまなかった」

「とてもついていけなかったけどね」

ビアンカは苦笑いしながら、ペロッと舌を出した。
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