「庭の千草」狂詩曲
ユリウスはひと呼吸置き、続けた。
「彼は噂ほど恐くはなかったし、厳しくはなかった。ちゃんと課題をこなしていれば、怒鳴られたことはなかった。クレアにはやたら厳しかったけれど」
詩月はダフィットがクレアを本気で、ヴァイオリニストに育てようとしていたんだろうと思った。
「クレアは腱鞘炎を悪化させさえしなければ、ウィーンを拠点にして立派に活躍できる実力を持っていたんだ。俺など足許に及ばないくらいに」
「確かクレーメル国際コンクールに優勝して」
「そう、その間もなく後だ。演奏家として活躍はできないと宣告された。無念だったに違いない。でも、クレアのお腹にお前が居た。お前が居たからクレアは前を向けた。クレアは宗月やお前に気を遣って、ダフィットの墓参りを躊躇っているようだ」
「僕から誘ってみるよ。父さんとも誘って、一緒に」
「彼は噂ほど恐くはなかったし、厳しくはなかった。ちゃんと課題をこなしていれば、怒鳴られたことはなかった。クレアにはやたら厳しかったけれど」
詩月はダフィットがクレアを本気で、ヴァイオリニストに育てようとしていたんだろうと思った。
「クレアは腱鞘炎を悪化させさえしなければ、ウィーンを拠点にして立派に活躍できる実力を持っていたんだ。俺など足許に及ばないくらいに」
「確かクレーメル国際コンクールに優勝して」
「そう、その間もなく後だ。演奏家として活躍はできないと宣告された。無念だったに違いない。でも、クレアのお腹にお前が居た。お前が居たからクレアは前を向けた。クレアは宗月やお前に気を遣って、ダフィットの墓参りを躊躇っているようだ」
「僕から誘ってみるよ。父さんとも誘って、一緒に」


