「庭の千草」狂詩曲
「演奏するのは私よ。ヴァイオリンに操られて演奏するのではないわ。ヴァイオリンが意志を持っているとでも言いたいの? 私が私の意志で演奏するのよ」

宗月が「あっ」と声を漏らした。

「『君のヴァイオリンがどんなヴァイオリンだったとしても、演奏するのはクレア、君なんだ』そう言ったのは貴方だわ」

「では約束して。無茶な練習はしないと。指に少しでも痛みや火照りを感じたら演奏を止めて指を休めること。もし少しでも違和感を感じたら医者に診てもらうこと。いいね」

「わかったわ」

クレアが渋々、返事をしたのを感じた。

ーー口喧しい先輩に対して、その場しのぎに頷いておけばいい。ダフィット先生のレッスンは本気で練習しなければ着いていけない

クレアの心の内の呟きが聞こえてきそうだった。

一筋縄ではいかないのは、ダフィット教授もクレアもだなと思った。

そしてクレアのダフィット教授への信頼や尊敬の念が、ただ師匠と云うだけなのかを疑り始めていた。

「宗月。クレアはやめておけ」

ユリウスとエィリッヒから、そう言われたのはクレアが出場するコンクールの前日だった。
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