「庭の千草」狂詩曲
3月末。

診察を終え、会計に向かう途中でダフィット先生の姿を見た気がし、後を追った。

見つからないように後を追ったが、循環器科、呼吸器科の辺りで見失ってしまった。

「かわいそうよね、肺がんだなんて。まだ50代半ばでしょう?」

「わたし、好きだったな。彼のヴァイオリン演奏。ヴァイオリンが凄い楽器なのよ。何て言ったかしら。え~っと……」

ナースステーションから聞こえてきた会話に、ハッとして耳を澄ませた。

「そんなーー」

ダフィット先生のことだ……疑いようがなかった。

ーー先生が肺がん

ヘビースモーカーなのは知っていた。

ーー先生にもっと演奏を聴いてほしい、もっと指導をしてほしい。先生が元気なうちに……時間がない

焦りと不安が、悠長に練習時間を減らしている場合ではないと警告していると思った。

ダフィット先生に、病状は聞けなかった。

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