「庭の千草」狂詩曲
「逃げないよ。次々に音は生まれていくんだ」

宗月はそう言って、ピアノ伴奏を始めた。

わたしと宗月の音色が始めて調和した気がした。

これがわたしたちの演奏ーー心地好い音色に胸が熱くなった。

演奏していても、雨雲に覆われたみたいで少しも自信が持てなかった。

それがパッと晴れたように感じた。

必死で捩じ伏せようとした楽譜が初めて曲になる、耳が澄んでいく。

音楽は心だーー宗月の言葉がストンと胸に落ちた。

コンクールの1週間前だった。

心がフッと軽くなり、宗月との練習が待ち遠しくなった。

演奏することが楽しくなった。

ダフィット先生は、わたしの演奏を初めて褒めた。

コンクール当日。

「今日は気分がいい」

ダフィット先生はそう言って、ヴァイオリンの弦を張り替えてくれた。

いつになく穏やかで優しい笑顔だった。

< 81 / 359 >

この作品をシェア

pagetop