嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「気に入ったついでに教えてやろう。女に振り回されるのも男の宿命じゃ。諦めて従うが良いぞ?」

 カイがいぶかしげな顔をすると、おばばは愉快そうに笑った。

「シイラはわがままな王女じゃった。龍すらそれには逆らえぬ。従うのが嫌なら、せめて星読みに(こび)を売ることじゃ」
「一体どういう……」
「ばば様! また勝手にこんなところに……!」

 駆け込んできたひとりの若い(おんな)神官に、カイは言葉を飲み込んだ。

「ああ! また補助輪(ほじょりん)もつけずに二輪車に乗って! 倒れて怪我でもしたらどうなさるんですかっ!」
「補助輪などダサくてつけていられるか。(ぬし)は本当に口うるさいのぅ」
「お歳を考えてください! さぁ、ばば様、わたしが漕ぎますから早く後ろに乗って! 騎士様もご迷惑をおかけしました」

 落ち着きなくまくし立てると、神官はまたがったペダルを踏み込んだ。

「お主もそろそろ戻るが良いぞ。式も終わる頃合いじゃろうて。では達者でな。お主の行く先に、女神の加護があらんことを」

 布施はいつでも歓迎じゃからな。最後にそんな言葉を残して、後部座席に乗せられたおばばが遠ざかる。何も聞けないまま、カイはドームの中心に取り残された。
 見上げた壁画も天井も、既に沈黙の場と化している。

「女神の加護、ね」

 冷えた瞳が遠くを見やる。神官から祝福をもらうなど、生まれてこの方一度もなかった。


 しばらく周囲を探るも、託宣にまつわる情報はないと判断したカイは、足早に式の末席へと戻ったのだった。





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