嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
そのとき、憤怒の形相のマテアスが飛び込んできた。眉根を寄せたジークヴァルトが、ぐっと口をへの字に曲げる。
サロンが沈静化するにつれて、ごりごりもしゅんとうなだれた。ここまでくればリーゼロッテも理解せざるを得ない。公爵家の呪いは、まさにジークヴァルトのごりごりと連動しているのだ。
真っ先にエラの安否を確認すると、マテアスはサロンを見回した。使用人たちのおかげで被害が少ないことを確かめて、再びジークヴァルトを冷ややかに見降ろしてくる。
「まったく、余計な仕事を増やさないでくださいよ。先に戻ってますから、旦那様もそろそろ執務室にお戻りになってくださいね」
ぷりぷりと怒りながら、マテアスは出て行った。その背を目で追っていると、耳元に吐息がかかる。
「それで答えはどうなんだ?」
今一度問いかけられて、リーゼロッテは一瞬口ごもった。月のものは終わりを迎えて、エッチをしても大丈夫そうな頃合いだ。だがこの平穏な日々を手放したくなくて、リーゼロッテはとっさに嘘をついてしまった。
「あの、できればもう数日は……」
「そうか」
静かに頷いて、ジークヴァルトはリーゼロッテを膝から降ろした。
「今日は早めに執務を終わらせる。お前ももう部屋に戻っていろ」
「はい、ヴァルト様」
髪をひと撫でしてから、ジークヴァルトはサロンを後にした。
「リーゼロッテ奥様、お怪我はございませんか?」
「ええ、わたくしは問題ないわ。エラこそ大丈夫?」
「はい、わたしも特には何も」
エラは無知なる者だ。異形は近づけないため、公爵家の呪いもエラの周辺では起こらなかったようだ。
「ねぇ、エラ。公爵家の呪いがどうして起きるのか、エラは知っていたの?」
「はい……去年の今頃、マテアスから聞かされました。あの、ずっと黙っていて申し訳ございません」
「いいのよ。ヴァルト様に口止めされていたのでしょう? エラは何も悪くないわ」
先ほど嘘をついてしまったことに後ろめたさも感じたが、ジークヴァルトもずっと公爵家の呪いの原因を故意に黙っていたのだ。ここはお互い様だと、リーゼロッテは己を納得させた。
この選択が大きな間違いであったことを、リーゼロッテは数日後に思い知ることになる。
解禁になったジークヴァルトは、それはそれはしつこかった。まだ明るい時間から始まった夫婦の営みが、終わりを告げたのは恐ろしいことに翌日の昼過ぎの話のことだ。
数日は立ち上がることもできない程抱きつぶされて、これからは不必要にジークヴァルトに待てはさせまいと、固く心に誓ったリーゼロッテだった。
サロンが沈静化するにつれて、ごりごりもしゅんとうなだれた。ここまでくればリーゼロッテも理解せざるを得ない。公爵家の呪いは、まさにジークヴァルトのごりごりと連動しているのだ。
真っ先にエラの安否を確認すると、マテアスはサロンを見回した。使用人たちのおかげで被害が少ないことを確かめて、再びジークヴァルトを冷ややかに見降ろしてくる。
「まったく、余計な仕事を増やさないでくださいよ。先に戻ってますから、旦那様もそろそろ執務室にお戻りになってくださいね」
ぷりぷりと怒りながら、マテアスは出て行った。その背を目で追っていると、耳元に吐息がかかる。
「それで答えはどうなんだ?」
今一度問いかけられて、リーゼロッテは一瞬口ごもった。月のものは終わりを迎えて、エッチをしても大丈夫そうな頃合いだ。だがこの平穏な日々を手放したくなくて、リーゼロッテはとっさに嘘をついてしまった。
「あの、できればもう数日は……」
「そうか」
静かに頷いて、ジークヴァルトはリーゼロッテを膝から降ろした。
「今日は早めに執務を終わらせる。お前ももう部屋に戻っていろ」
「はい、ヴァルト様」
髪をひと撫でしてから、ジークヴァルトはサロンを後にした。
「リーゼロッテ奥様、お怪我はございませんか?」
「ええ、わたくしは問題ないわ。エラこそ大丈夫?」
「はい、わたしも特には何も」
エラは無知なる者だ。異形は近づけないため、公爵家の呪いもエラの周辺では起こらなかったようだ。
「ねぇ、エラ。公爵家の呪いがどうして起きるのか、エラは知っていたの?」
「はい……去年の今頃、マテアスから聞かされました。あの、ずっと黙っていて申し訳ございません」
「いいのよ。ヴァルト様に口止めされていたのでしょう? エラは何も悪くないわ」
先ほど嘘をついてしまったことに後ろめたさも感じたが、ジークヴァルトもずっと公爵家の呪いの原因を故意に黙っていたのだ。ここはお互い様だと、リーゼロッテは己を納得させた。
この選択が大きな間違いであったことを、リーゼロッテは数日後に思い知ることになる。
解禁になったジークヴァルトは、それはそれはしつこかった。まだ明るい時間から始まった夫婦の営みが、終わりを告げたのは恐ろしいことに翌日の昼過ぎの話のことだ。
数日は立ち上がることもできない程抱きつぶされて、これからは不必要にジークヴァルトに待てはさせまいと、固く心に誓ったリーゼロッテだった。