嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「カイ坊ちゃまはこれからどうなさいますかぁ? お時間あるなら夕食もご用意いたしますがぁ」
「ああ、うん、それはいいや。今からこんがり亭に行こうと思ってたから」
「……イグナーツ様に会いに行かれるのですかぁ?」
「そろそろ戻ってきてる頃合いだしね」

 ベッティはイグナーツが大嫌いだ。ある意味カイは、イグナーツには心を開いている。カイがそれを望むなら、それはそれで別にいい。だが、よくないのはイグナーツの方だ。

 昔のことだが、カイがイグナーツと連れ立って出かけたときは、大概、女のにおいを(まと)わせて帰ってきていた。高級な香水の残り()だったとしても、その何とも言えない臭気はどうしてもあの女を彷彿(ほうふつ)とさせた。ベッティはそれがたまらなく嫌だった。

 カイも男だ。そういうことに興味があるというのは、もちろん理解はしている。だが情報取集と称して、誰彼なくそういう関係に(おちい)るのはいかがなものかと思ってしまう。

 カイがこうなってしまったのは、イグナーツに女遊びを教え込まれたからだ。それは疑いようのない事実だろう。

「あれ? ベッティ、おかしな顔になってるよ?」

 知らず頬をふくらませていたベッティの頭を、カイは可笑(おか)しそうにいい子いい子と何度も撫でた。

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