嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 ふとカイの気配を感じて、ベッティは浅いまどろみから浮上した。ぐっすりと眠っていたリープリングも飛び起きて、一目散(いちもくさん)に玄関へと駆けていく。
 カイは完璧に気配を消せる。なのにこういうときはいつでも、わざと分かるように姿を現すカイだ。それもひとえに、ベッティを驚かせないための気遣いからだった。

「お帰りなさいませ、カイ坊ちゃまぁ」
「ごめん、待たせたかな。ああ、分かったから、今日も可愛いよ、リープリング」

 熱烈なラブコールに出迎えられて、ひとしきり体を撫でくり回す。終わりを見せない求愛に、カイは持参したおやつを慣れた手つきで遠くに放り投げた。
 よろこび勇んで追いかけるリープリングを目で追ってから、カイは毛のついた上着を軽くはたいた。

「リープリング、洗ってくれたんだ? 汚れるの覚悟してたから助かったよ」
「カイ坊ちゃまのためならお安い御用ですよぅ。国の外れからお戻りになってお疲れでしょう? 今あったかいもの()れますねぇ」

 手際よく紅茶と軽食を用意する。忙しいカイと一緒にいられるのは、いつも僅かな時間だった。

「それで次のお仕事は何でしょう?」
「またブルーメ子爵家に行ってくれる?」
「ルチア様のもとにですかぁ?」
「そう、もうすぐ白の夜会でしょ。ベッティにはルチアのデビューのサポートをしてほしいんだ」
「かしこまりましたぁ。準備ができ次第、ブルーメ家に向かいますぅ」

 別にベッティでなくともこなせる話だ。そう思っても、不服を言うつもりはなかった。カイの望みはベッティの望みなのだから。

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