嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 大した感慨も含まない声音で、侯爵は唇の片側を僅かに吊り上げた。そんな仕草がまた(しゃく)に触って仕方がない。

「今後は頻繁に来させてもらうわ。これ以上、姉が寂しい思いをしないよう……」
「さすがはイジドーラ様。その慈悲深い言葉を、是非ともカイに聞かせてやりたいものだ。あやつはここへは近寄りもせぬ」

 何が可笑(おか)しかったのか、侯爵はくっと低い(わら)い声を漏らした。反射的に顔を上げ、むき出しの感情のままその顔を睨みつける。誰がカイにそうさせているというのか。この男さえ、ベアトリーセの苦しみに寄り添い、真摯(しんし)に守り支えていたのなら――。

 好奇の瞳で見下ろしてくる侯爵を前に、出かかった言葉を飲み込んだ。怒りに身を任せたところで、()りし日の悲劇が消え去る訳でもない。冷徹のヴェールを再び(まと)い、イジドーラはゆっくりと口元に妖艶な笑みを()いた。

「侯爵は何か()(ちが)えているようね。不平不満を外界に見出(みいだ)すのは、(おのれ)が満たされていない良い証拠。因果(いんが)を外に求める前に、深く自分自身と向き合う覚悟を持つことね」
「これはまた難解な。持ち帰り、この胸の内で問答してみましょう」

 たのしげに喉元を鳴らした侯爵を無視して、ベアトリーセの安らかな眠りのために、イジドーラは今一度(まぶた)を閉じた。

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