嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
デルプフェルト家はザイデル家の配下にある傍系貴族だ。後ろ暗い仕事を一手に引き受け、公爵家を背後から支える闇の一族だった。ベアトリーセはその主従関係を深めるために、差し出された生贄にほかならない。
役割は違えど、姉もまたザイデル家に生まれた者としての責を担っている。そう思うと滅多に社交に出ないベアトリーセを、いたずらにずるいと責めることもできなかった。
そんな日常が続き、ベアトリーセの婚姻の日が迫る頃、イジドーラはベアトリーセと共に神殿へと向かった。
デルプフェルト侯爵に嫁ぐ姉。支配的な兄の元に残される自分。果たしてどちらが不幸だろうか。移動中の馬車で、イジドーラはそんなことを考えていた。
着いた神殿の高窓から差し込む光に包まれ、一心に祈りを捧げるベアトリーセ。その神聖な姿は、まるで聖女が降り立ったかのようだ。口元に刻まれた慈悲深い笑みは、不幸などという言葉からは程遠い。そんな様子の姉を見て、イジドーラは聞かずにはいられなかった。
「お姉様は怖くないの……?」
ふいになされた妹の問いに、ベアトリーセは不思議そうな顔をした。
「なぁに? もしかしてお嫁に行くこと?」
「わたくし、あの男好きじゃない……だってお姉様に相応しくないもの」
周囲に誰もいないのをいいことに、真情を吐きだした。やさしく微笑みベアトリーセは、古びた祭壇に視線を戻す。
「わたくしね、この婚姻をずうっと心待ちにしていたのよ」
「え……?」
「これはお兄様も知らないことだけれど……わたくしもあの方も、青龍によって選ばれたの。こんな栄誉なこと、ほかにはないでしょう?」
うっとりと呟いて、祀られた青龍の像を仰ぎ見る。恍惚とした姉の表情に、イジドーラは困惑を隠せなかった。当時は意味が分からなかったが、今思うとベアトリーセは龍から託宣を受けていたのかもしれない。
役割は違えど、姉もまたザイデル家に生まれた者としての責を担っている。そう思うと滅多に社交に出ないベアトリーセを、いたずらにずるいと責めることもできなかった。
そんな日常が続き、ベアトリーセの婚姻の日が迫る頃、イジドーラはベアトリーセと共に神殿へと向かった。
デルプフェルト侯爵に嫁ぐ姉。支配的な兄の元に残される自分。果たしてどちらが不幸だろうか。移動中の馬車で、イジドーラはそんなことを考えていた。
着いた神殿の高窓から差し込む光に包まれ、一心に祈りを捧げるベアトリーセ。その神聖な姿は、まるで聖女が降り立ったかのようだ。口元に刻まれた慈悲深い笑みは、不幸などという言葉からは程遠い。そんな様子の姉を見て、イジドーラは聞かずにはいられなかった。
「お姉様は怖くないの……?」
ふいになされた妹の問いに、ベアトリーセは不思議そうな顔をした。
「なぁに? もしかしてお嫁に行くこと?」
「わたくし、あの男好きじゃない……だってお姉様に相応しくないもの」
周囲に誰もいないのをいいことに、真情を吐きだした。やさしく微笑みベアトリーセは、古びた祭壇に視線を戻す。
「わたくしね、この婚姻をずうっと心待ちにしていたのよ」
「え……?」
「これはお兄様も知らないことだけれど……わたくしもあの方も、青龍によって選ばれたの。こんな栄誉なこと、ほかにはないでしょう?」
うっとりと呟いて、祀られた青龍の像を仰ぎ見る。恍惚とした姉の表情に、イジドーラは困惑を隠せなかった。当時は意味が分からなかったが、今思うとベアトリーセは龍から託宣を受けていたのかもしれない。