嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
カイを庇うように、咄嗟に背を向けた。投げつけられた細い花瓶は、水を振りまきながらイジドーラの肩を直撃した。鈍い痛みをやり過ごした後、床で砕け散った破片を呆然と見やる。何が起きたのかを理解できないまま、イジドーラはベアトリーセへと顔を向けた。
「おねえ……さま……」
「イジドーラお嬢様、ひとまずこちらへ」
カイを抱いたまま、侍女に連れられ部屋を出る。閉められた扉の奥から、姉の悲痛な泣き声が響いた。誰かに暴力をふるうベアトリーセなど、イジドーラには信じられなかった。声を荒げる姿すら、今まで一度も見たことはなかったと言うのに。
ぐずり続けるカイを無意識にあやしながら、震える言葉で侍女に問う。
「お姉様は一体どうしてしまったというの?」
「それがわたしどもにもさっぱり……王城に行かれてから、あのようにカイ坊ちゃまを頑なに拒絶なさるようになって……」
その場では、産後で精神が不安定になっているのだろうと片付けられた。また様子を見に来るといい残し、イジドーラは後ろ髪をひかれながらデルプフェルト家を後にした。
それからというもの、合間を縫ってできる限りベアトリーセの元を訪れた。しかし姉の状態は改善するどころか、ますますおかしくなっていく。カイを遠ざけ、時に自分から会いに行っては泣きわめく。
あんなにもやさしかったベアトリーセがなぜ。そんな思いが巡るも、たまに顔を出すしかできないイジドーラにはどうすることもできなかった。
侍女から届く報告に、イジドーラはため息をこぼし続けた。兄に訴えても、侯爵に任せておけばいいとすげなく返されただけだった。カイもそろそろ言葉を覚え始めている。どうにかしてやりたいが、イジドーラ自身も多忙の身だ。デルプフェルト家ばかりに入り浸っているわけにもいかなかった。
「イジドーラ様?」
「おねえ……さま……」
「イジドーラお嬢様、ひとまずこちらへ」
カイを抱いたまま、侍女に連れられ部屋を出る。閉められた扉の奥から、姉の悲痛な泣き声が響いた。誰かに暴力をふるうベアトリーセなど、イジドーラには信じられなかった。声を荒げる姿すら、今まで一度も見たことはなかったと言うのに。
ぐずり続けるカイを無意識にあやしながら、震える言葉で侍女に問う。
「お姉様は一体どうしてしまったというの?」
「それがわたしどもにもさっぱり……王城に行かれてから、あのようにカイ坊ちゃまを頑なに拒絶なさるようになって……」
その場では、産後で精神が不安定になっているのだろうと片付けられた。また様子を見に来るといい残し、イジドーラは後ろ髪をひかれながらデルプフェルト家を後にした。
それからというもの、合間を縫ってできる限りベアトリーセの元を訪れた。しかし姉の状態は改善するどころか、ますますおかしくなっていく。カイを遠ざけ、時に自分から会いに行っては泣きわめく。
あんなにもやさしかったベアトリーセがなぜ。そんな思いが巡るも、たまに顔を出すしかできないイジドーラにはどうすることもできなかった。
侍女から届く報告に、イジドーラはため息をこぼし続けた。兄に訴えても、侯爵に任せておけばいいとすげなく返されただけだった。カイもそろそろ言葉を覚え始めている。どうにかしてやりたいが、イジドーラ自身も多忙の身だ。デルプフェルト家ばかりに入り浸っているわけにもいかなかった。
「イジドーラ様?」