嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 あれだけ信心深く、日々青龍に祈りを捧げていたベアトリーセだ。自分の産んだ子供は龍に選ばれ、(ほま)れ高き託宣を授かったはずだった。それなのに――

 青龍を冒涜(ぼうとく)し、人ならざる禁忌の異形になり果てる。カイが龍から受けた理不尽な託宣は、敬虔(けいけん)なベアトリーセにとって、どうあっても受け入れ難いものだったのだろう。精神を病み、その正気を手放すほどに。

(せめて初めから理由を知っていたのなら……)

 ベアトリーセを、そしてカイのこころを、もっと上手く守ってやれたかもしれなかった。

「次は白の夜会の前に顔を出します」

 あと何度、この背を見送ることができるのだろうか。カイはいつか託宣を果たす時が来る。信じたくなどないが、これまでの国の歴史を思うと、それを避けることは叶わない。

「何かあったらすぐわたくしを頼るのよ。カイのためなら何でもしてあげるから」
「ありがたきお言葉。ですが今はそのお気持ちだけ頂いておきます」

 悪戯な笑みを浮かべ、カイはイジドーラに向けて優雅に礼を取った。








< 164 / 302 >

この作品をシェア

pagetop