嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 少々乱暴に、だが的確に、動けないようにと素早い動きで抱きかかえる。それでも身をよじるルチアに向けて、眠り針を放とうとした。しかしあまりの暴れように、うまく狙いが定められない。

 仕方なく、カイはいきなりルチアの唇を塞ぎにかかった。目を見開いたルチアが、一瞬だけ身を固くする。すぐにもがきだしたが、大人しくなるまでカイは絶対に口づけを緩めることはしなかった。

 ルチアから力が抜けたのが分かると、カイは(ついば)むような口づけへと変化させた。やさしく()むたびに、柔らかな唇からちいさく吐息が漏れて出る。

 静寂の森で、密やかなリップ音が響いていく。ルチアを強く抱きしめたまま、カイは今度こそ首筋に眠り針を打ち込んだ。

 脱力した体を受け止める。自身を落ち着かせるために、カイは深く長く息を吐いた。


(オレはルチアを助けようとしたのか……?)

 とっさのことで気づけば勝手に体が動いていた。異形に襲われている人間を守るのは、王城騎士として当然のことだ。だがルチアは違う。異形に殺される託宣を、ルチアは龍から授かっているのだから。

 ルチアを異形から守るというのは、龍の託宣を(はば)むと同義のことだ。

 それはすなわち――
 その者が星に堕ちることに他ならない。


 すやすやと眠るルチアの寝顔を見つめながら、カイはしばらくその場で立ち尽くした。








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