嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「フーゲンベルク公爵様、先ほどは義娘のお相手をしてくださりありがとうございました。ルチア、お前からも改めて感謝の言葉を」
「光栄な機会を与えてくださって、心よりお礼申し上げます」

 棒読みでルチアは淑女の礼を取った。続けざまのダンスのせいで疲労困憊の様子だ。

「ルチア様、社交界デビューおめでとうございます。今日の装い、ルチア様に似合っていてとてもお綺麗ですわ」
「ありがとうございます、リーゼロッテ様」

 リーゼロッテと目が合うと、ルチアは少しだけほっとした顔をした。慣れない夜会で気が張っているのだろう。そんな時に知り合いに会うと、ちょっと心強く感じるものだ。

「あの、リーゼロッテ様……」

 何かためらっているルチアに向けて、先を促すようにリーゼロッテは笑みを浮かべて小首をかしげた。

「カイを……いえ、その、デルプフェルト様をお見かけしませんでしたか……?」
「カイ様を?」

 思い返してみるが、広間では見かけなかったように思う。

(……去年の白の夜会では、カイ様、令嬢姿をしてたっけ)

 今日も何か捜査に当たっているのかもしれない。騎士として警護に回っている可能性もあるだろう。

「わたくしもお見かけしませんでしたわね。ジークヴァルト様はいかがですか?」
「オレも今日は見ていないな」
「そう、ですか……」

 落胆したようにルチアは瞳を伏せた。その様子はどこか物憂(ものう)げだ。

(もしかして、ルチア様はカイ様のことを……?)

 シネヴァの森の神事に向かう途中、立ち寄ったブルーメ家にはなぜかカイがいた。親しそうなふたりを見て、不思議に思ったことをリーゼロッテは思い出した。

「そろそろ行くぞ」

 促されて、ふたりに別れを告げる。

(帰ったらきっと、今夜も朝までコースね……)

 夜会帰りの夜は、ジークヴァルトは必ずリーゼロッテをしつこく抱いてくる。それを覚悟して、馬車の中でしっかり眠っておこうと、強く思ったリーゼロッテだった。

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