嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
「ねぇ、カイ……」

 短い情事を終えたあと、手早く衣服を整える背に呼びかけられる。
 今夜のお相手は古くから付き合いのある未亡人だ。互いの良いところは知り尽くし、それでいて完全に割り切った遊びの関係だった。

「わたくし、田舎領主と再婚することになったの。今までたのしかったわ。ありがとう」
「それはおめでとうございます。末永くおしあわせに」
「何? それだけなの?」

 くすくすと笑いながら、寝台の(ふち)に腰かけたカイの首筋に、後ろから両腕を絡ませてくる。むき出しの胸を強く押し当て、カイの耳を甘く()む。

「ねぇ最後に口づけて」
「駄目ですよ。その唇は運命の(ひと)のために大切に取っておかないと」
「もう、そればっかり」

 興味を失ったように、あっさりとカイから熱は離された。

「あなた、本当は女なんか好きじゃないし、女などひとつも信用していないでしょう?」
「……そのようなことは。確かに女性の心は気紛(きまぐ)れだとは思っていますが、それがまた男を魅了するというものです」

 軽く笑顔を作ると、カイは着替えを再開した。双子の王子の誕生に、イジドーラもよろこんでいることだろう。頃合いを見て自分も顔を出そうと、頭の中ではそんなことを考えていた。

「この後はどうされますか? 必要なら世話係の侍女を呼びますよ」
「いらないわ。今夜はもう疲れたし、朝までここで眠るから」

 気だるげにリネンに沈むと、寝返ってこちらに背を向ける。

「ではわたしはこれで。いつまでも貴女のしあわせを祈っています」

 見られてもいないのに、カイは(うやうや)しく騎士の礼を取った。


「ほんと、最後まで嘘ばっかり……」

 扉を閉める間際、たのしげなつぶやきが、カイの耳に小さく届いた。







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