嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
第14話 桃色の茶会
白い長衣に袖を通す。とは言えいつもの神官服ではなく、女性が着るような繊細な作りのものだ。薄い生地の頼りなさは、まるで自分の心を映しているようにマルコには思えた。
「マルコさん、準備は整いましたか?」
「はい、レミュリオ様。お待たせしてすみません」
「いえ、慣れない衣装で戸惑ったことでしょう。前が見えづらいかもしれませんね。慌てずゆっくりと参りましょうか」
仕上げに長いヴェールをかぶらされ、マルコはレミュリオとともに歩き出した。祈りの泉のある部屋に続く廊下は閑散としていて、誰ともすれ違わないことに安堵する。こんな格好を見られるのは、やはり恥ずかしく思えてしまう。
「あまりご気分が優れないようですね」
「なんだか緊張してしまって。夕べはうまく眠れなかったんです」
「そうでしたか。大変かと思いますが、時間はさほどかかりません。今日は何とか頑張っていただけますか?」
マルコはこれから泉で神事を行うことになっていた。亡くなった王女の代わりに、巫女でもない自分が、夢見の力を持っているという理由だけで。
長い間、王城で幽閉されているのも、夢見の巫女としての待遇らしい。本物の巫女が現れない限り、この生活が延々と続くのだろうか。先の見えない日々に、不安ばかりが募っていく。
「レミュリオ様……本当にボクで大丈夫なんでしょうか……?」
何度も投げかけた問いを、マルコは再び口にした。いやな顔ひとつせず、レミュリオは静かに微笑み返す。
「降りた神託にあった通り、古き慣習は捨てる時なのでしょう。万が一何かが起きたとしても、あなたのことは神官長がしっかりと守ってくださいます。もちろんわたしもそのつもりです。マルコさんは安心して神事に臨んでください」
「……分かりました」
男であるマルコを巫女に仕立て上げることに、反対する者は多くいた。夢見の力を受け継ぐ女児が生まれる可能性もあるため、せめて王妃が子を生むまでは待つべきだ。その意見からこれまで先延ばしされてきた泉の神事だったが、双子の王子の誕生により、結局はマルコが務めることになってしまった。
初めて入る神事の部屋には、奥にもうひとつ古びた扉があった。レミュリオに誘われ、マルコはその中にひとり取り残された。閉ざされた部屋の中央には、丸い大きな泉が湧いている。
「マルコさん、準備は整いましたか?」
「はい、レミュリオ様。お待たせしてすみません」
「いえ、慣れない衣装で戸惑ったことでしょう。前が見えづらいかもしれませんね。慌てずゆっくりと参りましょうか」
仕上げに長いヴェールをかぶらされ、マルコはレミュリオとともに歩き出した。祈りの泉のある部屋に続く廊下は閑散としていて、誰ともすれ違わないことに安堵する。こんな格好を見られるのは、やはり恥ずかしく思えてしまう。
「あまりご気分が優れないようですね」
「なんだか緊張してしまって。夕べはうまく眠れなかったんです」
「そうでしたか。大変かと思いますが、時間はさほどかかりません。今日は何とか頑張っていただけますか?」
マルコはこれから泉で神事を行うことになっていた。亡くなった王女の代わりに、巫女でもない自分が、夢見の力を持っているという理由だけで。
長い間、王城で幽閉されているのも、夢見の巫女としての待遇らしい。本物の巫女が現れない限り、この生活が延々と続くのだろうか。先の見えない日々に、不安ばかりが募っていく。
「レミュリオ様……本当にボクで大丈夫なんでしょうか……?」
何度も投げかけた問いを、マルコは再び口にした。いやな顔ひとつせず、レミュリオは静かに微笑み返す。
「降りた神託にあった通り、古き慣習は捨てる時なのでしょう。万が一何かが起きたとしても、あなたのことは神官長がしっかりと守ってくださいます。もちろんわたしもそのつもりです。マルコさんは安心して神事に臨んでください」
「……分かりました」
男であるマルコを巫女に仕立て上げることに、反対する者は多くいた。夢見の力を受け継ぐ女児が生まれる可能性もあるため、せめて王妃が子を生むまでは待つべきだ。その意見からこれまで先延ばしされてきた泉の神事だったが、双子の王子の誕生により、結局はマルコが務めることになってしまった。
初めて入る神事の部屋には、奥にもうひとつ古びた扉があった。レミュリオに誘われ、マルコはその中にひとり取り残された。閉ざされた部屋の中央には、丸い大きな泉が湧いている。