嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「これから少しずつ努力いたしますから……それでは駄目ですか?」
「ふっ、別に構わない。夜のお前は、随分と素直に言葉をもらしているしな」
「し、知りません、そんなことっ」

 悪い顔をされ、真っ赤になってぷいと顔をそむけた。夜の営みであんあん言わされる中、自分があられもないことを口走っている自覚はある。だがこんなときに言わなくてもいいではないか。ぷくと頬を膨らませ、リーゼロッテは日が沈みかけた外に視線を向けた。
 窓ガラスに映るジークヴァルトが、自分の肩に顔を寄せてくる。そのままちぅと肌に吸いつかれた。

「あっ、や、ヴァルト様……!」

 ちくりとした痛みに、キスマークをつけられたのだとすぐ分かる。こういう跡をつけられないためにも、まぐあい禁止令が出されていたのだ。

 そのとき目の前の窓に、大量の血のりの手形が連打されだした。ひっと身をすくめると、ジークヴァルトが後ろから窓を叩いて異形を吹き飛ばす。カーテンを閉めるのと同時に、先ほどつけたキスマークの上を、ジークヴァルトはぺろっと舐めあげた。

「もう、ヴァルト様!」
「問題ない。ぎりぎりの位置だ」

 指で押し下げた(えり)ぐりを元通りに整えながら、ジークヴァルトはしれっとした顔で返してくる。異形が騒ぐということは、ジークヴァルトがリーゼロッテに欲情しているということだ。公爵家の呪いの真実を知ってから、リーゼロッテはどんな顔をしていいのかが分からない。

 思い返せばこの公爵家の呪いは、かなり前から起きていた。そんな早い段階からジークヴァルトに欲望を向けられていたことに、今さらながら動揺してしまう。

「どうした? 顔が赤いぞ?」
「ゆ、夕日でそう見えているだけですわっ」

 早まった鼓動が収まらないまま、馬車はレルナー家へと到着したのだった。




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