嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「はじめての夜会なのに、今夜は最初しか出られないのよ。お義父様が十五になるまでは他所(よそ)の夜会も駄目だっておっしゃるの。あと五年もあるだなんて気に入らないわ」

 この国で成人と認められるのは十五歳になってからだ。それまでは内々で(もよお)す夜会以外は、出席できないのが暗黙のルールとなっている。

「フーゲンベルク家のお茶会でよろしければ、またツェツィーリア様をご招待いたしますわ」
「本当!? わたくし絶対に出席するわ!」

 横にいるジークヴァルトの口が、微妙にへの字に曲がった。だがツェツィーリアのためなら、お茶会を開くくらいは許してくれるだろう。過去の失敗から、まず外堀を埋めることを覚えたリーゼロッテだ。

「それにしてもお姉様、あの時は本当に心配したのよ? 神殿に(かどわ)かされるなんて、わたくし絶対に許せない!」
「その節はご心配をおかけしました。ですがあのことはどうか内密に……」
「わたくし、誰にも話したりしてないわ。ルカに話そうとしたって、どうせ龍に目隠しをされるんだもの」

 ツェツィーリアは不満そうに唇を尖らせた。リーゼロッテが神殿に囚われていたことは、ダーミッシュの家族にすら知らされていない。今では極秘事項扱いとなっていた。

 そのとき義弟のルカを連れたダーミッシュ伯爵夫妻が部屋に通された。

「お義父様、お義母様……!」

 会うのは神事の旅に出たとき以来だ。よろこび勇んで駆け寄るも、フーゴとクリスタはただやさしげに笑みを返してきた。

「公爵様、リーゼロッテ様、この度はご婚姻果たされましたこと、心からお(よろこ)び申し上げます」
「フーゲンベルク公爵家のますますの繁栄をお祈り申し上げますわ」

 顔を伏せ、形式ばった礼をとる。一歩引いたふたりの態度に戸惑って、リーゼロッテはうまく言葉を返せない。

「今は人目もない。そう硬くならなくてもいいだろう」
「いいえ、リーゼロッテ様はもう公爵家のお方となられました。そういうわけには参りません」

 ジークヴァルトの言葉に、フーゴは静かに首を振った。その横でクリスタも同意を示すように瞳を伏せる。

「リーゼロッテ様、これからは公爵夫人として胸をお張りになって過ごされますよう」
「わたくしたちも陰ながらお支えして参ります」
「フーゴお義父様、クリスタお義母様……」

 目の前に線を引かれたようで、リーゼロッテは悲しくなった。それでもふたりのまなざしは、以前と変わらず温かいままだ。遠くから見守ってくれているのだと、逆に勇気をもらう。

「ありがたいお言葉です。ジークヴァルト様の妻として、この先、自覚をもって過ごしていきます」

 涙ぐみながら返すと、ふたりはうれしそうに頷いた。

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