嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「ほら、難しくってできませんでしょう?」
『違うよ、リーゼロッテ。ヴァルト様は恥ずかし過ぎて声が出せないんだよ』
「まぁ、きっとそうね、アルフレート」
『いや、そんなことはないぞ?』

 低めだが、ジークヴァルトとは思えない甲高い声が響いた。驚いてその顔を見る。

『やり方に少し戸惑っただけだ。……と、ボクを抱えるこの男が言っている』

 目の前に、ずいとアルフレートジュニアを近づけられた。驚くべきことに、ジークヴァルトの唇は全くと言うほど動いていない。

「うそ、どうしてそんな……」
『こんなことまで器用にこなせるなんて、リーゼロッテ、ヴァルト様に惚れ直しちゃうね!』

 動揺のあまり、あらぬことを口走る。すぐにしまったと思ったが、ジークヴァルトを褒め倒して恥ずかしがらせる作戦にシフトした。

『ヴァルト様、ほんとカッコいいもんね。こんな素敵な旦那さま、なかなか世間にいないんじゃない?』
「そうね、腹話術もこなせる旦那様だなんて、わたくし本当にしあわせ者だわ」
『背も高くてカッコよくって、仕事もできるし、頼りがいもあるし、ホント世界一の旦那様だね!』

 ジークヴァルトの眉間のしわが目に見えて深まった。これは相当動揺しているに違いない。
 ほくそ笑み、攻めの一手でリーゼロッテは追い打ちをかけようとした。

『可愛いな』
「えっ?」
『可愛いな、リーゼロッテ』

 アルフレートジュニアのもふもふ顔が、さらにずいと近づいた。

『可愛すぎるぞ、リーゼロッテ』

 つぶらの瞳と見つめ合い反応できずに固まっていると、アルフレートジュニアが視界から消え去った。後ろから現れたジークヴァルトに、素早く唇を奪われる。

『……と、この男が言っている』

 アルフレートジュニアの片腕を上げ、ジークヴァルトは唇を動かさないまま意地悪く魔王の笑みを浮かべた。

「もう! ヴァルト様ったら!」

 真っ赤になったリーゼロッテが、アルフレートの腕を使ってぽこぽことジークヴァルトを叩く。そこを引き寄せられて、縫いぐるみを二体挟み込んだまま、深く深く口づけられた。

『ふっ、本当に可愛いぞ、リーゼロッテ』
「も、もう分かりましたから……」

 完全敗北を認め、リーゼロッテはただただ真っ赤になった。


 ちなみにこのふたりは、たいそう立派な国で、たいそう立派な地位にいる、たいそう立派なご貴族夫妻である。
 ま、言うまでもないか。




番外編《小話》『ボクの名前はアルフレート!』おわり


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