嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 膝に飛び乗ってきた小鬼を、ルチアは無意識のように抱き寄せた。ずっと一緒にいて、愛着が湧いてしまっているのだろう。
 安心させるために軽く笑みを作ったあと、リーゼロッテははしゃぎ回る小鬼たちの動きを目で追った。

「力加減によってはそうなるわね。でもわたくし、あの子たちを無理に祓うのは嫌いなの」

 実力行使が必要なのは、悪意ある異形に限られる。未練を残して死んだ者たちを、力づくでどうこうする権利が自分にあるはずもない。例え力を扱えようとも、リーゼロッテにはそう思えてならなかった。

「それにここにいる子たちはみな、満足すると自分で天に還っていくから」
「天に還る?」
「異形の者はね、(もと)をただせばみな未練を残して亡くなった人間なのよ。苦しみに(とら)われたまま何百年も過ごしている者もいるわ」
「じゃあ、この子も人間だったんですか?」
「ええ」

 きゅるるんお目目と見つめ合うが、ルチアの小鬼は自らのことを語ろうとはしてこない。話を聞いて欲しがる者が多い中、リーゼロッテの力に触れるだけで満足する小鬼もいた。そんな彼らは自身で折り合いをつけ、ゆっくりと浄化の道を歩んでいく。

(かたく)なに心を閉ざす異形もいるけれど……。時間がかかっても自分の意思で昇って行けるなら、それに越したことはないものね)

 リーゼロッテにできるのは、異形が握りしめている(わだかま)りに目を向けさせて、それを(ほど)くきっかけを作ることだけだ。

「実はわたし、似たような光がここから出たことがあって……」

 思案顔で聞いていたルチアが、自身の手のひらをじっと見つめた。不安げに唇を噛みしめる。

「もしかしてその光は金色だった?」
「あっ、はい、確かにあのとき金色の火花みたいな感じでした」
「ならきっとそれも浄化の力ね。この力を持つのは……」

 王家の血が流れる者だけだ。そう言おうとしてリーゼロッテはぐっと喉を詰まらせた。龍に目隠しされる感覚は、いつまで経っても慣れることはない。仕方なしにほかの言葉を探す。

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