嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 寝台の(ふち)に腰かけたルチアは、つい先ほども聞いたことを口にした。

「ねぇ、本当にカイから何も連絡はないの?」
「今のところ特にありませんねぇ」
「そう……」

 しゅんと俯いた先、夜着の(すそ)から桜色の爪が覗いている。カイに綺麗だと思われたくて、ベッティにお願いしてぴかぴかに整えてもらった。

「テラスも窓も鍵はかけないでおいてね?」
「ご心配なさらずともぉ、言われた通りどこもかしこも開けっ放しにしておりますよぅ」
「本当に? うっかり閉めちゃったりしてない?」

 しつこく何度も確かめる。嫌な顔ひとつせず、ベッティは自慢げに胸を反り返らせた。

「ベッティの辞書にうっかりなんて言葉はございませんのでぇ、そこんとこは超絶ご安心くださいましぃ。ぶっちゃけ超絶物騒なんでぇ閉めさせてほしいのは山々なんですがぁ」
「だって明日カイが使者として来るのよ? もしかしたら今夜わたしのところにも来てくれるかもしれないじゃない。念のためもう一回だけ確認して!」
「さすがのあの方も公爵家(ここ)へは不法侵入できないと思いますけどねぇ。ほぉらご覧の通りぃ、これっぽっちも閉まっておりませんよぅ」

 (まく)ったカーテンの向こうで、テラスの扉が開け閉めされる。冷たい風が吹き込んでくると、ようやくルチアは納得して頷いた。

「さぁさ、もういい加減横になってくださいましぃ」
「いやよ。今夜はわたし寝ないでカイを待ってるの」
「夜更かしは美容の大敵ですよぅ。それにお布団がぬくぬくあったまってたほうがぁ、あの方もおよろこびになるんじゃないですかねぇ?」
「それはそうかも!」

 眠るつもりはなかったが、ルチアはあっさりと寝台にもぐりこんだ。

「あっ、部屋の明かりも真っ暗にしないでおいてね」
「仰せのままにぃ。待つのはそこそこにしてきちんとお休みくださいましねぇ」

 ルチアの言いつけ通り、ベッティはランプを灯したまま出て行った。就寝時には火種だけに落とす暖炉の炎も、小さくせずにしてくれたようだ。
 ひとりきりになった寝室で、ぱちぱちと(まき)()ぜる音が響いた。跳ね踊る炎を見つめていると、初めてカイと体を繋げた日のことを思い出す。

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