嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 使者が執務室に通される。エラが言っていた通り、やってきたのはカイだった。
 既知(きち)の仲とは言え今日は大事なお務めだ。公爵夫人らしく粛々(しゅくしゅく)とした態度で、リーゼロッテはジークヴァルトと並び立った。
 今日のカイは王城騎士の正装をしている。式典時ほど華美なものではないが、いつもの彼よりも凛々しく見えた。

(ドレスや宝飾も眼福だけど、騎士服ってだけで目の保養になるわね。軍服マニアなら、むせび泣いて(おが)み出しそうだわ)

 ジークヴァルトも騎士服を着ていると、普段よりもマシマシで格好良く見えてしまう。この世界に転生できて良かったと、改めて思うリーゼロッテだった。
 真面目顔のカイが招待状を乗せたトレーを(うやうや)しく掲げ持った。(はく)押しされた封筒も、ため息が出るほど美しいデザインだ。

「フーゲンベルク公爵、ならびに公爵夫人、王よりお預かりして参りました。こちらをどうぞお納めください」
「ああ、確かに受け取った」

 招待状はそのままマテアスに手渡され、リーゼロッテたちは応接用のソファへと腰かけた。

(カイ様、今日はお時間あるようね。だったらここではなくサロンでお茶ができないかしら……)

 恥ずかしげに頬を染めるルチアが頭をよぎり、カイに会わせてあげたくなってくる。執務室(ここ)からうまいこと誘い出せないものだろうか。

「お寒い中、たいへんでしたわね。よかったらサロンの方で……」
「いえ、これも大事な務めですから」
「夜会の警護はどうなっている?」
「王妃の離宮を中心に、厳重に行われる予定です。今年は騎士としてわたしも裏方に回ります」
「そうか」

 託宣を果たしたハインリヒはどんな女性に触れようと、もう大事故は起こらない。それを受けて、誕生したばかりの双子の王子の警護に人員を()くということのようだ。
 納得して頷きつつも話の腰を折られてしまった。なんとかカイをサロンに誘えないものかと、会話の軌道修正を試みる。

「でも使者がカイ様だなんてわたくし驚きましたわ。せっかくですからサロンに移動してゆっくりと……」
「今回は特別です。実は公爵夫人にご相談したいことがありまして」
「リーゼロッテに? 何をだ」

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