嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 不機嫌そうにジークヴァルトが割って入った。動じた様子もなくカイはにっこりと笑みを向けてくる。王城からの使者としての態度を、カイはあくまで貫く様子だ。

「夫人がアンネマリー王妃に贈り物をなさいましたでしょう? そのお品にイジドーラ様がご興味を持たれましてね。その件で少々お話をさせていただけたらと」
「イジドーラ様が? それで今日の使者にカイ様が選ばれて……?」
「そんなところです」

 王子誕生にあたってフーゲンベルク公爵家から祝いの品は贈ったが、それとは別にアンネマリーに向けてリーゼロッテは個人的に贈り物をした。
 こういったとき赤ん坊に目が行きがちで、母親を(ねぎら)う人間は少ないものだ。王子の誕生はもちろん喜ばしいが、命がけで出産したアンネマリーにこそおめでとうと伝えたかったリーゼロッテだ。

「でしたらサロンの方で」

 そのタイミングでマテアスが三人分の紅茶をサーブしてきた。(かぐわ)しい湯気を立ち昇らせるカップを前に、思わず言葉を詰まらせる。せっかく用意してもらったが、それでもリーゼロッテは負けじと食い下がった。

「ここではなんですから、改めてサロンに席を用意しますわ。お話はそちらでお伺いいたします」
「いえ、お気遣いなく。この場で十分です。内密にお話させていただきたいことでもありますし」

 そう言われてはリーゼロッテも引き下がるしかなかった。脳内に浮かぶルチアの顔が、みるみるうちに哀しそうになっていく。

(うう、ルチア様、不甲斐なくってごめんなさい……)

 話を聞いたあと、もう一度サロンに誘ってみよう。そう決意したものの、次の任務を理由にカイは、要件が終わるとすぐさま王城へと帰還したのだった。

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