嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 ようやく呼ばれたお茶の誘いに、ルチアが速足で前を行く。ベッティは黙ってその背に付き従った。到着したサロンで待っていたのは、リーゼロッテひとりきりだった。

「デルプフェルト様は……? もう帰ってしまったんですか?」
「そうなの。お忙しいみたいでわたくしも無理に引き留められなくて」

 すまなそうに言ったリーゼロッテの前で、ルチアの口元が失望で歪められた。そのあからさまな態度に、益々リーゼロッテが申し訳なさそうな顔となる。

「それで……わたしのこと、何か言ってませんでしたか?」

 すがるような瞳に、リーゼロッテは沈痛な面持(おもも)ちで首を振った。酷いことをされた被害者のように、ルチアは唇を噛みしめる。それを受けたリーゼロッテの表情が、さらに哀しみを深くした。

「ごめんなさい。今回は使者としてのやり取りしかなくって」
「もういいです」

 ぶっきらぼうに言って、ルチアは態度悪く視線を逸らした。そんな下位令嬢にあるまじき行為にも、リーゼロッテは同情の目を向けている。

(別にご自分のせいでもないのにぃ、ホントお人()しな方ですよねぇ)

 おとなしく控えながら、ベッティは腹でそんなことを考えていた。
 不機嫌な様子も隠そうともせず、ルチアは仏頂面で俯いたままだ。ベッティにあたるだけなら別段問題ないが、公爵夫人相手にこの態度はいただけない。放置するといずれカイに実害が及びそうだ。ここらが(くぎ)の刺しどきか。

「あの、気分が優れないので、もう下がってもいいですか?」
「ええ、もちろん。気落ちせずゆっくりと休んでちょうだいね」

 形ばかりの礼を取り、ルチアはサロンを出て行こうとした。

「あっ、ルチア様」
「なんでしょう?」

 引き留めたリーゼロッテを煩わしそうに振り返る。

「新年を祝う夜会では、カイ様は騎士として警護に回るそうよ。先に知っておいた方がいいかと思って」
「そうですか……わざわざありがとうございます」

 今度は少しだけマシな礼を取ると、ルチアは足取り重くサロンを出て行った。続こうとしたベッティに、リーゼロッテが言葉をかけてくる。

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