嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「ようこそ、エルヴィン様、クラーラ様。わたくし、おふたりが婚約されたと聞きましたわ。本当におめでとう」
「ああああありがとうございます、リーゼロッテ様。わたし、じゃなかったわたくしも自分で驚いてしまって、いまだに夢だったらどどどどうしようかと……」
「クラーラは疑い深いね。いいよ、何度だって愛を囁いてあげるから」
「ええええエルヴィンしゃまっ」
「駄目だよ、クラーラ。エルヴィンって呼んでごらん?」

 耳元に唇を寄せられて、真っ赤になったクラーラは今にも卒倒してしまいそうだ。

「兄上……このような席でおやめください」
「いいじゃないか、エーミール。こんなにも可愛い婚約者を前に、我慢するなんてできるわけないだろう?」
「しかし義姉上は嫌がっているのでは?」
「あああ姉上だなんてっ」
「何? クラーラはわたしが嫌なのかい?」
「そそそそのようなことはっ」
「だったら問題ないね? ほらクラーラ、もっと近くにおいで」
「まったく……ずっとこの調子ですのよ? どこで育て方を間違えたのかしら」

 あきれ顔のカミラも、口で言うほど嫌がっているようには見えなかった。
 クラーラが嫁いだら、あの寒々しいグレーデン家もさぞかし明るい雰囲気になるのだろう。そんな想像をして、リーゼロッテはふふと笑みをこぼした。

 それから幾人も客人を迎え入れ、ふとルチアはどうしているかと意識を向ける。用意した席の一番(はし)の方で、令嬢たちが固まっておしゃべりしているのが目に入った。

(ルチア様はヤスミン様たちと一緒にいるみたいね)

 暴言令嬢イザベラも同席しているようだが、ヤスミンに任せておけば揉め事は起きないはずだ。

(それよりもそろそろジークヴァルト様が顔を出す時間帯ね。今日は絶対に好きにはさせないんだから!)

 あーんや抱っこで恥をかくのは、もう二度と真っ平御免だった。何かやらかしたら、夜は一緒に眠らない。そう高らかに宣言してあるので、ジークヴァルト封じ込め作戦はすでに成功したも同然だ。

(それでも油断は禁物ね。これまで何度も痛い目に合ってるし)

 変な方向に気を引き締め直し、リーゼロッテは招待客と談笑を続けた。

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