嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「なんだかうらやましいです。言葉がなくっても通じ合ってるみたいで……」
「ふん、恋愛結婚だなんて馬鹿げてるわ。立場をまっとうしてこそ真の貴族じゃない」
心から思ったルチアの言葉は、イザベラにあっさり一蹴されてしまった。気落ちするルチアをちらっと伺ってから、ヤスミンは別の一角へと視線をやった。
「それにしても驚きましたわよね。エルヴィン・グレーデン様とクラーラ様のご婚約」
「本当ね。あれだけ候補がいたって言うのに、由緒あるグレーデン侯爵家がへリング子爵家みたいな田舎貴族を選ぶだなんて」
毒づいたイザベラもヤスミンと同じ方向を見やる。そこにいたクラーラはエルヴィンとエーミールに挟まれて、おどおどと立っていた。
すぐ傍にはグレーデン侯爵夫人のカミラがいて、風格ある美男美女の中で挙動不審なクラーラだけが、浮いた存在のように目に映った。
「エルヴィン様は純粋にクラーラ様をお気に召したって話ですわよ?」
「あらそう。ではクラーラ様がよほどうまく立ち回ったと言うことね」
「うまく、ですか?」
「よくいるのよ。上位貴族に取り入るために、破廉恥な手段を使って近づく下賤で狡猾な女がね」
「ふふふ、あのクラーラ様にそんな器用なことができるとは思えませんけれど」
可笑しそうに言ったヤスミンに、ルチアも激しく同意した。イザベラの言葉を聞いていると、気力が削がれて滅入ってきてしまう。
それなのにイザベラのおしゃべりは止まらなくて、ルチアは口も挟めず黙って聞くしかなかった。さらっと流せるヤスミンの性格が、羨ましくて仕方がなく思えてくる。
「ルチア様もお気をつけになって。昔うわさにあったでしょう? ハインリヒ王が王太子時代に手を付けた令嬢が、厄介払いで老人に嫁がされたって話」
「厄介払いで……? あのハインリヒ王が?」
「そう言えば、昔アンネマリー様もそんなことおっしゃってましたわね。ふふ、ここだけのお話ですけれど、アンネマリー様は令嬢時代、ものすごく王太子殿下のこと嫌ってらしたのよ? 誤解は解けたようですから、それは根も葉もない噂なのでは?」
「火のないところに煙は立たないと言うじゃない。いい思いをしようと権力に群がる愚かな人間は、利用される矮小な立場なんだってこと、きちんと弁えるべきではなくって?」
「さすがイザベラ様、貴族の鑑ですわ。何にせよ、厄介事には首を突っ込まないのがいちばんってことですわね」
ヤスミンののほほんとした受け答えに救われながらも、ルチアはなんとか茶会を乗り切ったのだった。
「ふん、恋愛結婚だなんて馬鹿げてるわ。立場をまっとうしてこそ真の貴族じゃない」
心から思ったルチアの言葉は、イザベラにあっさり一蹴されてしまった。気落ちするルチアをちらっと伺ってから、ヤスミンは別の一角へと視線をやった。
「それにしても驚きましたわよね。エルヴィン・グレーデン様とクラーラ様のご婚約」
「本当ね。あれだけ候補がいたって言うのに、由緒あるグレーデン侯爵家がへリング子爵家みたいな田舎貴族を選ぶだなんて」
毒づいたイザベラもヤスミンと同じ方向を見やる。そこにいたクラーラはエルヴィンとエーミールに挟まれて、おどおどと立っていた。
すぐ傍にはグレーデン侯爵夫人のカミラがいて、風格ある美男美女の中で挙動不審なクラーラだけが、浮いた存在のように目に映った。
「エルヴィン様は純粋にクラーラ様をお気に召したって話ですわよ?」
「あらそう。ではクラーラ様がよほどうまく立ち回ったと言うことね」
「うまく、ですか?」
「よくいるのよ。上位貴族に取り入るために、破廉恥な手段を使って近づく下賤で狡猾な女がね」
「ふふふ、あのクラーラ様にそんな器用なことができるとは思えませんけれど」
可笑しそうに言ったヤスミンに、ルチアも激しく同意した。イザベラの言葉を聞いていると、気力が削がれて滅入ってきてしまう。
それなのにイザベラのおしゃべりは止まらなくて、ルチアは口も挟めず黙って聞くしかなかった。さらっと流せるヤスミンの性格が、羨ましくて仕方がなく思えてくる。
「ルチア様もお気をつけになって。昔うわさにあったでしょう? ハインリヒ王が王太子時代に手を付けた令嬢が、厄介払いで老人に嫁がされたって話」
「厄介払いで……? あのハインリヒ王が?」
「そう言えば、昔アンネマリー様もそんなことおっしゃってましたわね。ふふ、ここだけのお話ですけれど、アンネマリー様は令嬢時代、ものすごく王太子殿下のこと嫌ってらしたのよ? 誤解は解けたようですから、それは根も葉もない噂なのでは?」
「火のないところに煙は立たないと言うじゃない。いい思いをしようと権力に群がる愚かな人間は、利用される矮小な立場なんだってこと、きちんと弁えるべきではなくって?」
「さすがイザベラ様、貴族の鑑ですわ。何にせよ、厄介事には首を突っ込まないのがいちばんってことですわね」
ヤスミンののほほんとした受け答えに救われながらも、ルチアはなんとか茶会を乗り切ったのだった。