嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「ほほほ本気なら尚更いけませんわ。明日に差し障りますっ」
「触れるだけだ、問題ない」
「ふ、触れるだけってそんなっ」

 止めにかかる口とは裏腹に、体は正直に反応してしまう。
 それでも必死になってリーゼロッテは身をよじらせた。

「ですからもう悪戯(いたずら)はっ」
「悪戯ではない。オレはいたって真剣だ」
「真剣ならばいいというものではありませんっ。明日は夜会だと何度も申しておりますでしょう!」
「移動がない分だけ朝はゆっくりできる」
「それはそうですけれど……!」

 何を言ってもジークヴァルトは止まらない。
 むしろ魔王の笑みが深まっていくのはどうしてだろうか。

「こうしていてもちゃんと会話ができている。お前の望む通りだろう?」
「わ、わたくしが言っているのはもっと普通な感じでのおしゃべりでっ」

 悪戯はしつこく繰り返されて、見悶えながらも上ずる声で抗議を続けた。
 そんなリーゼロッテを眺めつつ、ジークヴァルトはなんだか益々楽しそうだ。

「ヴァルトさまっ、も、いい加減に」

 終わりの見えないじれったい愛撫に、リーゼロッテは陥落しそうになった。どうしても負けたくなくて、ジークヴァルトの首にしがみつく。
 耳元に唇を寄せ、仕返しのように緑の力を手加減なしで吹き込んだ。
 神事のピアスに力を()めると、耳がどうしようもなく熱を持つ。それを狙っただけなのに、途端にジークヴァルトは獲物を狙うハンターのような顔をした。

(眠れる獅子を寝覚めさせてしまった……!)

 自ら犯した失態に気がつくも、後悔はいつでも先に立たないものだ。
 リーゼロッテに触れる手が、手加減のないものに様変わりする。

「子供ではないのですから、もうひと晩くらい我慢してくださいませっ」
「ふっ、馬鹿なやつだな。子供じゃないから我慢できないんだろう?」

 耳元で囁かれ、熱い吐息を落とされる。
 直接胸元の龍のあざに触れられて、駆け抜けた熱にリーゼロッテはとうとう白旗を上げてしまった。

「ヴぁるとさま、おねがいわたくし、もう……」

 すがるように仰ぎ見る。
 懇願する唇を一度小さく啄むと、ジークヴァルトは意地悪く冷静に問いかけてきた。

「おしゃべりはもういいのか?」
「だって、おはなしなんて、もうしてられな……」
「ふっ、そうか」

 口づけが一気に大胆なものになった。
 そのあとはジークヴァルトの独壇場だ。

「安心しろ、明日は夜会だ。きちんと手加減はしてやる」

 今夜一番の魔王の笑みを見たのを皮切りに、その後の記憶はあやふやになった。気づいたら、遅めの朝を迎えていたリーゼロッテだった。

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