嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
◇
レルナー公爵の登場を待ち、先に集まった貴族たちが招待客を吟味しあっている。
今夜の目玉は、十歳になったレルナー公爵令嬢の婚約発表だ。ダーミッシュ伯爵家の長男が相手に選ばれたことは、去年のうちに社交界で噂になっていた。
その他にも話題となるものはある。グレーデン侯爵家の跡取りエルヴィンが、今日はじめて公式の場にお目見えするらしい。
女帝ウルリーケの死後、存続を危ぶまれていたグレーデン家は、起死回生の一手で復活を遂げた。その跡取りの妻の座が空いていることを知った貴族たちが、色めき立つのも無理はない。
そして三つめの話題は、フーゲンベルク公爵の出席だ。レルナー家とフーゲンベルク家は先々代から折り合いが悪く、長く絶縁状態だったのは有名な話だ。フーゲンベルク公爵がダーミッシュ伯爵令嬢を妻に迎えたのを機に、関係の修復を図ったというのが、多くの貴族の見解だった。
(今日の主役はあくまでもツェツィーリア様ね。わたしたちはあまり目立って邪魔をしないようにしないと……)
エマニュエルから受けた指南で、ある程度自分たちに注目が集まることは、リーゼロッテにも分かっていた。だが思った以上に好奇の目を向けられている。周囲の視線が刺さりまくって、保った笑顔が引きつりそうだ。
遠巻きにひそひそと囁かれる中、気軽に声をかけてくる者もいる。
「おう、おふたりさん。晴れて夫婦か、よかったなジークヴァルト」
「ユリウス様、ご無沙汰しております」
やってきたのはツェツィーリアの叔父ユリウスだった。レルナー公爵の弟である彼は、なぜだかフーゲンベルク家で護衛のようなことをしている。普段は誰彼なく女性を口説きまくって、いつもふらふらしている印象だ。だが姪の婚約発表ということもあり、今夜は夜会服でビシっとキメている。
(ユリウス様はジークフリート様の従兄なのよね。それで昔からフーゲンベルク家に出入りしているのかしら)
レルナー家と仲が悪いという割には、ユリウスもツェツィーリアも、よくフーゲンベルク家に入り浸っていた。噂と事実にずれがある。やはり噂は鵜呑みにすべきではないというところだろう。
「ようやくお披露目する気になったか、ジークヴァルト。本当はリーゼロッテを外には出したくなかったんじゃないのか?」
「いえ、そんなことは……」
ふいと顔をそらしたジークヴァルトをユリウスはおもしろそうに見やった。
「隠さなくてもいい。もう毎晩、手離せなくて仕方ないんだろう?」
レルナー公爵の登場を待ち、先に集まった貴族たちが招待客を吟味しあっている。
今夜の目玉は、十歳になったレルナー公爵令嬢の婚約発表だ。ダーミッシュ伯爵家の長男が相手に選ばれたことは、去年のうちに社交界で噂になっていた。
その他にも話題となるものはある。グレーデン侯爵家の跡取りエルヴィンが、今日はじめて公式の場にお目見えするらしい。
女帝ウルリーケの死後、存続を危ぶまれていたグレーデン家は、起死回生の一手で復活を遂げた。その跡取りの妻の座が空いていることを知った貴族たちが、色めき立つのも無理はない。
そして三つめの話題は、フーゲンベルク公爵の出席だ。レルナー家とフーゲンベルク家は先々代から折り合いが悪く、長く絶縁状態だったのは有名な話だ。フーゲンベルク公爵がダーミッシュ伯爵令嬢を妻に迎えたのを機に、関係の修復を図ったというのが、多くの貴族の見解だった。
(今日の主役はあくまでもツェツィーリア様ね。わたしたちはあまり目立って邪魔をしないようにしないと……)
エマニュエルから受けた指南で、ある程度自分たちに注目が集まることは、リーゼロッテにも分かっていた。だが思った以上に好奇の目を向けられている。周囲の視線が刺さりまくって、保った笑顔が引きつりそうだ。
遠巻きにひそひそと囁かれる中、気軽に声をかけてくる者もいる。
「おう、おふたりさん。晴れて夫婦か、よかったなジークヴァルト」
「ユリウス様、ご無沙汰しております」
やってきたのはツェツィーリアの叔父ユリウスだった。レルナー公爵の弟である彼は、なぜだかフーゲンベルク家で護衛のようなことをしている。普段は誰彼なく女性を口説きまくって、いつもふらふらしている印象だ。だが姪の婚約発表ということもあり、今夜は夜会服でビシっとキメている。
(ユリウス様はジークフリート様の従兄なのよね。それで昔からフーゲンベルク家に出入りしているのかしら)
レルナー家と仲が悪いという割には、ユリウスもツェツィーリアも、よくフーゲンベルク家に入り浸っていた。噂と事実にずれがある。やはり噂は鵜呑みにすべきではないというところだろう。
「ようやくお披露目する気になったか、ジークヴァルト。本当はリーゼロッテを外には出したくなかったんじゃないのか?」
「いえ、そんなことは……」
ふいと顔をそらしたジークヴァルトをユリウスはおもしろそうに見やった。
「隠さなくてもいい。もう毎晩、手離せなくて仕方ないんだろう?」