嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 ユリウスの言いように顔が赤くなる。新婚カップルなどはしあわせそうでうらやましいと、ただ祝福の気持ちを抱くだけだった。だがいざ自分がその立場になると「昨夜(ゆうべ)はおたのしみでしたね」的な視線をやたらと向けられる。その事実をリーゼロッテは最近になって思い知るようになった。

 そんなとき、ご夫人を連れた誰かが、すぐ脇を通り過ぎた。

(あ、カイ様)

 一瞬、目が合ったにもかかわらず、カイはそのまま夫人とともに遠ざかっていく。

(気づかなかった……わけではなさそうね)

 カイ・デルプフェルトは既婚者相手に遊びまわっている。これは社交界で有名な話だ。公爵夫人となった今、もし夜会で出会ったとしても、カイと親しいそぶりは見せないように。エマニュエルとの勉強会で、リーゼロッテはそうレクチャーを受けていた。

(前にベッティからも注意されたっけ)

 カイには悪い噂が絶えないと、そんなことを言われた気がする。

「いい、放っておけ」

 ジークヴァルトも彼に気づいたのだろう。その返事に頷き返すころには、カイはもう人波に消えていた。

「あら、ユリウス。久しぶりね」
「これはカミラ姉上。お? 今日のエスコートはエルヴィン、お前か」
「叔父上、わたしもようやく外に出られましたよ」

 今度はすらりとした青年と綺麗な夫人が連れ立って近づいてきた。

(この方はカミラ・グレーデン侯爵夫人……エーミール様のお母様ね。エルヴィン様はエーミール様のお兄様で、おふたりはツェツィーリア様の従兄(いとこ)だから、ユリウス様は叔父さんってことで、ということはカミラ様はユリウス様のお姉様でそれでツェツィーリア様の伯母さんってことで……)

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