嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「ジークヴァルトは相変わらず過保護にしてるみたいね。もう少し自由にしてあげないとリーゼロッテに嫌われるわよ?」
姉に苦言を呈されて、ジークヴァルトはすいと顔を逸らした。すでにもう何とか自重をしていると言うのに、これ以上どうしろと言うのだろうか。
「お姉様はダンスフロアにはもう行かれましたか?」
「これからよ。バルバナス様に一曲付き合ったら、今日は他の誰かとも踊ろうかしら? リーゼロッテにも先を越されてしまったし、いい歳して令嬢のドレスを着るのもなんだから、わたしもそろそろ伴侶を見つけようかと思って」
「ああ? そんな話聞いてねぇぞ? それに今夜のパートナーはこのオレだ。ほかの男と踊るなんざ許さねぇ」
「何よ、ちょっとくらいいいでしょ? バルバナス様もわたしを盾にして逃げ回ってばかりいないで、王族として貴族相手に少しは働いたらどうなの?」
「あんだと?」
ぎゃんぎゃんと言い合うふたりを前に、リーゼロッテが困惑ぎみにジークヴァルトを見上げてきた。アデライーデの嫁ぎ先が見つからないのは、バルバナスが妨害してくるからだ。常々母親のディートリンデがそう零しているが、リーゼロッテには事情が把握できていないのだろう。
「いつものことだ、心配するな」
「はい、ヴァルト様」
そっと頬を撫でると、リーゼロッテはくすぐったそうにはにかんだ。胸の奥をぎゅっと掴まれて、膝裏を掬い上げ今すぐ寝所へと駆け込みたい衝動に見舞われる。
「何がいつものことなのよ? それにしてもジークヴァルト、今日はリーゼロッテを抱き上げるのは我慢しているようね?」
アデライーデの突っ込みに、ジークヴァルトの理性が引き戻される。今の言葉が一瞬でも遅れていたら、迷わずそれを実行していたに違いない。
「一昨年のこの夜会で、ヴァルトがずっとリーゼロッテを抱き上げていたでしょう?」
「お、お姉様、そのお話は……」
リーゼロッテの頬が薔薇色に色づいた。羞恥に潤む瞳をほかの誰にも見せたくなくて、再び理性が試される。思わぬ試練続きに、ジークヴァルトの口が大きくへの字に曲げられた。
「そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫よ。あれ以来、令嬢たちの間で流行っているみたいだし」
「流行っている? 何がですか?」
「リーゼロッテみたいに夜会でパートナーに抱き上げてもらうことよ。でもそのせいで腰を痛める男が続出してるって話だけど」
「あ、あの抱っこ行脚が!?」
「ほら、今夜も本家の抱き上げが見られないかと、周囲がやけにそわそわしているでしょう?」
ぽかんと口を開け、リーゼロッテはこちらをチラ見している貴族たちを見回した。それからさらに頬を染め、恨みがましそうな視線をジークヴァルトへと向けてくる。
姉に苦言を呈されて、ジークヴァルトはすいと顔を逸らした。すでにもう何とか自重をしていると言うのに、これ以上どうしろと言うのだろうか。
「お姉様はダンスフロアにはもう行かれましたか?」
「これからよ。バルバナス様に一曲付き合ったら、今日は他の誰かとも踊ろうかしら? リーゼロッテにも先を越されてしまったし、いい歳して令嬢のドレスを着るのもなんだから、わたしもそろそろ伴侶を見つけようかと思って」
「ああ? そんな話聞いてねぇぞ? それに今夜のパートナーはこのオレだ。ほかの男と踊るなんざ許さねぇ」
「何よ、ちょっとくらいいいでしょ? バルバナス様もわたしを盾にして逃げ回ってばかりいないで、王族として貴族相手に少しは働いたらどうなの?」
「あんだと?」
ぎゃんぎゃんと言い合うふたりを前に、リーゼロッテが困惑ぎみにジークヴァルトを見上げてきた。アデライーデの嫁ぎ先が見つからないのは、バルバナスが妨害してくるからだ。常々母親のディートリンデがそう零しているが、リーゼロッテには事情が把握できていないのだろう。
「いつものことだ、心配するな」
「はい、ヴァルト様」
そっと頬を撫でると、リーゼロッテはくすぐったそうにはにかんだ。胸の奥をぎゅっと掴まれて、膝裏を掬い上げ今すぐ寝所へと駆け込みたい衝動に見舞われる。
「何がいつものことなのよ? それにしてもジークヴァルト、今日はリーゼロッテを抱き上げるのは我慢しているようね?」
アデライーデの突っ込みに、ジークヴァルトの理性が引き戻される。今の言葉が一瞬でも遅れていたら、迷わずそれを実行していたに違いない。
「一昨年のこの夜会で、ヴァルトがずっとリーゼロッテを抱き上げていたでしょう?」
「お、お姉様、そのお話は……」
リーゼロッテの頬が薔薇色に色づいた。羞恥に潤む瞳をほかの誰にも見せたくなくて、再び理性が試される。思わぬ試練続きに、ジークヴァルトの口が大きくへの字に曲げられた。
「そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫よ。あれ以来、令嬢たちの間で流行っているみたいだし」
「流行っている? 何がですか?」
「リーゼロッテみたいに夜会でパートナーに抱き上げてもらうことよ。でもそのせいで腰を痛める男が続出してるって話だけど」
「あ、あの抱っこ行脚が!?」
「ほら、今夜も本家の抱き上げが見られないかと、周囲がやけにそわそわしているでしょう?」
ぽかんと口を開け、リーゼロッテはこちらをチラ見している貴族たちを見回した。それからさらに頬を染め、恨みがましそうな視線をジークヴァルトへと向けてくる。