嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「それにしたってブラル伯爵様は何をなさっていたの? 宰相の地位を任されるほどのお方なら、下位の令嬢相手に事実を握り潰すことくらい簡単だったでしょうに」
「それが令嬢の方が一枚上手だったようですわよ? 何でも密会中のところを噂好きの貴族にわざと目撃させて、ご自分は襲われたと泣きながらその場で証言なさったとか」
「言い逃れできない状況を作って、イザベラ様の婚約者に責任を取らせたってわけね」
「なんて用意周到なのかしら!」
「イザベラ様との婚約が公に発表されたら、自分は捨てられると思ったのでしょうね。ほら、ハインリヒ王が厄介払いで、親子ほど年の離れた男に嫁がせた令嬢がいたじゃない。きっとあんなふうになるのが嫌だったのよ」
その話が周囲の貴族にも飛び火して、あちこちで似たような会話が繰り広げられ始めた。
「イザベラ様もお気の毒に。正式に発表する前だったのがせめてもの救いね」
「表向きはイザベラ様が婚約者を気に入らなくて、伯爵家側から断りを入れたってことになっているらしいわ」
「このままではブラル家も面目丸潰れだものね」
「そんな状況でイザベラ様は気丈にも夜会にお出になられて……」
「本当に。わたくしなら恥ずかしすぎて、とてもではないけれど顔を出せそうにありませんわ」
同情しているふうに見せかけて、笑いものにしているようにしかルチアには思えなかった。多くの貴族が遠巻きにイザベラを眺め、その口々に嘲笑を含ませている。
そのイザベラはというと、臆することもなく堂々と顔を上げて立っていた。機嫌良くは見えないが、自信満々の様子は普段の彼女と何も変わりなく見える。
イザベラはなぜいつもあれほど強気でいられるのだろうか。羨ましいというよりも、純粋にそんな疑問が湧き起こった。あの他人の目を気にしない鋼の心を以ってすれば、カイとのことも大っぴらにできそうに感じられた。
(でもそうか……。わたしも上手にやれば、カイとの仲を周りに認めさせることができるのかも)
秘密がばれて引き離される前に、計画をしっかり練って表沙汰にしてしまえば、義父が認めざるを得ない状況を作り出せるかもしれない。このことをカイに相談してみよう。そう思った途端、会いたくて居ても立ってもいられなくなった。
「ルチア、あちらにフーゲンベルク公爵夫妻がいらっしゃる。挨拶をしないわけには参らんな」
意識を戻され、義父とともにリーゼロッテたちのいる方へ進んでいった。
「それが令嬢の方が一枚上手だったようですわよ? 何でも密会中のところを噂好きの貴族にわざと目撃させて、ご自分は襲われたと泣きながらその場で証言なさったとか」
「言い逃れできない状況を作って、イザベラ様の婚約者に責任を取らせたってわけね」
「なんて用意周到なのかしら!」
「イザベラ様との婚約が公に発表されたら、自分は捨てられると思ったのでしょうね。ほら、ハインリヒ王が厄介払いで、親子ほど年の離れた男に嫁がせた令嬢がいたじゃない。きっとあんなふうになるのが嫌だったのよ」
その話が周囲の貴族にも飛び火して、あちこちで似たような会話が繰り広げられ始めた。
「イザベラ様もお気の毒に。正式に発表する前だったのがせめてもの救いね」
「表向きはイザベラ様が婚約者を気に入らなくて、伯爵家側から断りを入れたってことになっているらしいわ」
「このままではブラル家も面目丸潰れだものね」
「そんな状況でイザベラ様は気丈にも夜会にお出になられて……」
「本当に。わたくしなら恥ずかしすぎて、とてもではないけれど顔を出せそうにありませんわ」
同情しているふうに見せかけて、笑いものにしているようにしかルチアには思えなかった。多くの貴族が遠巻きにイザベラを眺め、その口々に嘲笑を含ませている。
そのイザベラはというと、臆することもなく堂々と顔を上げて立っていた。機嫌良くは見えないが、自信満々の様子は普段の彼女と何も変わりなく見える。
イザベラはなぜいつもあれほど強気でいられるのだろうか。羨ましいというよりも、純粋にそんな疑問が湧き起こった。あの他人の目を気にしない鋼の心を以ってすれば、カイとのことも大っぴらにできそうに感じられた。
(でもそうか……。わたしも上手にやれば、カイとの仲を周りに認めさせることができるのかも)
秘密がばれて引き離される前に、計画をしっかり練って表沙汰にしてしまえば、義父が認めざるを得ない状況を作り出せるかもしれない。このことをカイに相談してみよう。そう思った途端、会いたくて居ても立ってもいられなくなった。
「ルチア、あちらにフーゲンベルク公爵夫妻がいらっしゃる。挨拶をしないわけには参らんな」
意識を戻され、義父とともにリーゼロッテたちのいる方へ進んでいった。