嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
それにしても恐ろしく目立つ夫婦だ。公爵から感じる威圧感は、単に背が高いと言う理由だけではないだろう。その横にいるリーゼロッテはリーゼロッテで、小柄な割に華やかさが半端ない。
今夜の彼女の装いは、既婚者らしく落ち着いた色合いのものだった。それでもリーゼロッテは周囲の貴族の視線をくぎ付けにしている。本当に美しい人間は、何を着ても似合ってしまうということなのだろう。
お決まりの挨拶で話しかけると、ブルーメ子爵は公爵に長々と礼を述べ始めた。くどくどと続けられる話に、思わずあくびが出そうになる。心を無にして会話が終わるのを待っていると、リーゼロッテが小声でルチアに話しかけてきた。
「ルチア様の今日の紅、とっても素敵なお色ね」
「ありがとうございます。今夜も全部ベッティに見立ててもらいました」
「さすがはベッティね。わたくしもそういった濃いめの紅をさしてみたいのだけれど……」
何か秘密を打ち明けるかのように、リーゼロッテはさらに声を潜ませた。
「ほら、わたくし口が小さい方でしょう? 濃い赤の紅をつけると、引き締まって益々唇が小さく見えてしまうのよ。だからその色がお似合いになるルチア様が本当にうらやましいわ」
そう言って、リーゼロッテは恥ずかしそうに頬を染めた。上品な笑みを浮かべる唇は、瑞々しい桜色をしている。完璧に見えるリーゼロッテがそんなコンプレックスを抱いていることに、ルチアは正直驚いてしまった。
姿かたちだけでなく裏表のない穏やかな性格も、淑女の鑑と言えるリーゼロッテだ。公爵にも溺愛されているし、ルチアにしてみれば彼女の存在そのものがうらやましく思えて仕方がない。
「そうそう」
内緒話の続きをするように、リーゼロッテは自然に顔を寄せてきた。つられるようにルチアも耳を傾ける。
「先ほどあちらの王族用の扉がある付近でお見かけしましたわ。今ならまだいらっしゃるんじゃないかしら」
「え?」
「あ、ほらあそこ」
誰とは言われなかったが、その方向をとっさに見やった。貴族たちの波の中、カイの姿を必死に探す。
リーゼロッテの視線の先に、念願のカイの横顔が見えた。一瞬、瞳を輝かせるも、ルチアはすぐに顔を青ざめさせた。
カイのすぐそばにひとりの女性が並び立っていた。しかも白の夜会で見かけたときとは、また別のご夫人だ。親密そうに寄り添うふたりは、まるで恋人同士のような近さに見える。
「嘘、どうして……」
今夜の彼女の装いは、既婚者らしく落ち着いた色合いのものだった。それでもリーゼロッテは周囲の貴族の視線をくぎ付けにしている。本当に美しい人間は、何を着ても似合ってしまうということなのだろう。
お決まりの挨拶で話しかけると、ブルーメ子爵は公爵に長々と礼を述べ始めた。くどくどと続けられる話に、思わずあくびが出そうになる。心を無にして会話が終わるのを待っていると、リーゼロッテが小声でルチアに話しかけてきた。
「ルチア様の今日の紅、とっても素敵なお色ね」
「ありがとうございます。今夜も全部ベッティに見立ててもらいました」
「さすがはベッティね。わたくしもそういった濃いめの紅をさしてみたいのだけれど……」
何か秘密を打ち明けるかのように、リーゼロッテはさらに声を潜ませた。
「ほら、わたくし口が小さい方でしょう? 濃い赤の紅をつけると、引き締まって益々唇が小さく見えてしまうのよ。だからその色がお似合いになるルチア様が本当にうらやましいわ」
そう言って、リーゼロッテは恥ずかしそうに頬を染めた。上品な笑みを浮かべる唇は、瑞々しい桜色をしている。完璧に見えるリーゼロッテがそんなコンプレックスを抱いていることに、ルチアは正直驚いてしまった。
姿かたちだけでなく裏表のない穏やかな性格も、淑女の鑑と言えるリーゼロッテだ。公爵にも溺愛されているし、ルチアにしてみれば彼女の存在そのものがうらやましく思えて仕方がない。
「そうそう」
内緒話の続きをするように、リーゼロッテは自然に顔を寄せてきた。つられるようにルチアも耳を傾ける。
「先ほどあちらの王族用の扉がある付近でお見かけしましたわ。今ならまだいらっしゃるんじゃないかしら」
「え?」
「あ、ほらあそこ」
誰とは言われなかったが、その方向をとっさに見やった。貴族たちの波の中、カイの姿を必死に探す。
リーゼロッテの視線の先に、念願のカイの横顔が見えた。一瞬、瞳を輝かせるも、ルチアはすぐに顔を青ざめさせた。
カイのすぐそばにひとりの女性が並び立っていた。しかも白の夜会で見かけたときとは、また別のご夫人だ。親密そうに寄り添うふたりは、まるで恋人同士のような近さに見える。
「嘘、どうして……」