嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 ランプレヒトは製剤技術にも優れていて、液体を瓶から出すと媚薬の効力が失われるように作られていた。飲み物に入れられて、知らず飲まされる事故を防ぐためだ。
 その上ひと目でそれと分かるように、目立つピンクの瓶に入れられている。淑女教育で媚薬の存在は教えられるので、騙されて飲まされる心配もないという訳だ。

「この媚薬は合法の物ですが、相手の同意なき使用は重罪です。知らなかったなどと言うおつもりはないでしょう?」
「ど、同意など、そんなものあるに決まっているではないか! こんな場所をひとりでうろついていたんだ。この女の目的も男漁りに決まっているだろうっ」
「嘘言わないで! そっちが無理やり襲ってきたくせに!」
「小娘が! 口答えするなっ」

 ルチアに向かって振り上げられた腕を、無駄のない動きでカイはつかみ取った。背中側にねじり上げ、扉に向かって突き飛ばす。

「今ならまだ、未遂で無罪放免にできますが?」

 冷たく言い放つと、男は赤黒い顔を歪ませて悔しそうに部屋を出て行った。

(現行犯で捕まえたほうが、後々のためになったかもな)

 あの手の(やから)は懲りずに同じことを繰り返すものだ。もう少し登場を遅らせるべきだったかと、カイはそんなことを考えた。
 ぎゅっと騎士服の二の腕を掴まれて、カイはルチアを見下ろした。結い上げた髪が多少乱れているものの、決定的な乱暴は受けていない様子だ。

「ねぇ、ルチア。自分がどれだけ危険なことしたのか分かってる?」
「だ、だってなかなか会いに来てくれないから、それでわたしカイのこと探して……」
「しっ、黙って」

 誰かが近づく気配に、カイはルチアの唇に指を押し当てた。開け放たれた扉を注視する。次いで天蓋の掛かった寝台の裏手にルチアを導き、その場にしゃがみこませた。

「誰か来る。そこで見えないように隠れてて」

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