嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
産後には抜け毛が増えると聞いていたリーゼロッテは、自身の発案で作った整髪料を出産祝いとしてアンネマリーに贈った。
(髪にはにがりがいいって話だし……)
にがりはマグネシウムの宝庫だ。この国には海はないが、塩の産地として知られる塩湖の水からなら、にがりが作れるのではないか。そう思ったリーゼロッテは、フーゲンベルク家とダーミッシュ家共同で開発を進めてもらっていた。
(元はと言えば、マテアスのために考案した品だったのよね)
もじゃもじゃ天然パーマのマテアスだが、密かに進行していく薄毛をちょっぴり気にしているようだった。彼の父親であるエッカルトも頭髪の寂しいおじいちゃんなので、その心配も尤もなことだろう。
将来の自分の毛量を悲観して、余計禿げたりしては可愛そうだ。何とか良い案はないかと考え始めたのが、すべての事の始まりだった。
試行錯誤と紆余曲折を経て、育毛に良さげな品が完成した。その過程で、ヘアミスト代わりにも使えることが判明し、試作品を配っては内々で好評を得ていたというわけだ。
リーゼロッテ的にはそれを商品化する頭はなかったが、イジドーラから王家とのコラボ商品にできないかという打診があった。
なんでもイジドーラはピッパ王女を生んだ後、しばらくの間、抜け毛に悩まされたらしい。アンネマリーが使っているのを見て、いたく興味を持ったとの話を先日カイから知らされた。
「公爵家としては断りづらいだろう? 無理なようなら遠慮せずに言うといい。わたしからも義母上に言っておく」
「いえ、国益となるのなら、わたくしたちも開発した甲斐があるというものですわ」
王家ブランドとして売り出せば、貴族たちはこぞって買いに走ること請け合いだ。フーゲンベルク家とダーミッシュ家の名が陰に隠れたとしても、利益は十二分に回ってくることだろう。
「リーゼは昔からいろんなものを生み出す天才ね。ダーミッシュ領の香水や髭剃り、ストローなんかもそうでしょう? 最近では二輪の車ね。あれもリーゼロッテの発案と聞いたわ」
「でもわたくしは初めにあれこれ言うだけで、あとはいつも任せっきりだから……」
海水を煮詰めると塩とにがりができるらしい。今回もそんなふわっとした情報から、ちゃんとした商品ができあがった。日本で得た自分の知識がポンコツすぎて、みなの優秀さにいつも頭が下がる思いだ。
「アンネマリー様、そろそろお時間でございます」
女官が迎えに来ると、アンネマリーは笑顔で立ち上がった。遠くから赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。どうやら王子たちのミルクの時間のようだ。
(髪にはにがりがいいって話だし……)
にがりはマグネシウムの宝庫だ。この国には海はないが、塩の産地として知られる塩湖の水からなら、にがりが作れるのではないか。そう思ったリーゼロッテは、フーゲンベルク家とダーミッシュ家共同で開発を進めてもらっていた。
(元はと言えば、マテアスのために考案した品だったのよね)
もじゃもじゃ天然パーマのマテアスだが、密かに進行していく薄毛をちょっぴり気にしているようだった。彼の父親であるエッカルトも頭髪の寂しいおじいちゃんなので、その心配も尤もなことだろう。
将来の自分の毛量を悲観して、余計禿げたりしては可愛そうだ。何とか良い案はないかと考え始めたのが、すべての事の始まりだった。
試行錯誤と紆余曲折を経て、育毛に良さげな品が完成した。その過程で、ヘアミスト代わりにも使えることが判明し、試作品を配っては内々で好評を得ていたというわけだ。
リーゼロッテ的にはそれを商品化する頭はなかったが、イジドーラから王家とのコラボ商品にできないかという打診があった。
なんでもイジドーラはピッパ王女を生んだ後、しばらくの間、抜け毛に悩まされたらしい。アンネマリーが使っているのを見て、いたく興味を持ったとの話を先日カイから知らされた。
「公爵家としては断りづらいだろう? 無理なようなら遠慮せずに言うといい。わたしからも義母上に言っておく」
「いえ、国益となるのなら、わたくしたちも開発した甲斐があるというものですわ」
王家ブランドとして売り出せば、貴族たちはこぞって買いに走ること請け合いだ。フーゲンベルク家とダーミッシュ家の名が陰に隠れたとしても、利益は十二分に回ってくることだろう。
「リーゼは昔からいろんなものを生み出す天才ね。ダーミッシュ領の香水や髭剃り、ストローなんかもそうでしょう? 最近では二輪の車ね。あれもリーゼロッテの発案と聞いたわ」
「でもわたくしは初めにあれこれ言うだけで、あとはいつも任せっきりだから……」
海水を煮詰めると塩とにがりができるらしい。今回もそんなふわっとした情報から、ちゃんとした商品ができあがった。日本で得た自分の知識がポンコツすぎて、みなの優秀さにいつも頭が下がる思いだ。
「アンネマリー様、そろそろお時間でございます」
女官が迎えに来ると、アンネマリーは笑顔で立ち上がった。遠くから赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。どうやら王子たちのミルクの時間のようだ。