嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「それでだ、アンネマリー。子どもたちが吸いきれなかった分、胸が張って辛かったらいつでもわたしが引き受けるからね」
「もう、ハインリヒったら。リーゼたちもいるのに……」

 耳元で囁かれたアンネマリーがぽっと頬を赤く染めた。何を言われたのかは聞き取れなかったが、他人のイチャコラならいくらでも見ていられると、しみじみ思ったリーゼロッテだった。

「ヴァルトたちも双子の顔を見てやってくれ」

 いそいそとベビーベッドへと近づいた。遠目に見ても可愛らしい赤ん坊だ。

「兄をディーデリヒ、弟をルートヴィヒと名付けたの」
「おふたりとも素敵なお名前ね」

(髪も瞳の色もハインリヒ様にそっくり! でもふわふわの髪質はアンネマリー似だわ)

 プラチナブロンドにアメジストのような透き通った紫の瞳の双子は、まるで精巧な人形のように見えた。そんな赤ん坊がふたり並んで寝かされているのだ。あまりの可愛さにリーゼロッテはこれ以上なく心をときめかせた。
 しかしジークヴァルトが覗き込んだ瞬間に、うとうととまどろみかけていた双子が突然火がついたように泣き出してしまった。

「まぁ、ふたりとも急にどうしたのかしら」
「ジークヴァルトが(にら)むからではないのか? おい、ヴァルト、お前はあまり顔を近づけるな」

 ハインリヒに言われ、リーゼロッテは慌ててジークヴァルトの手を引き王子たちから遠ざけた。それでも双子は泣き止まない。

「おむつも汚れてないし、困ったわね。眠くてぐずっているのかしら」
「いや、さっきまで眠りかけていたんだ。やはりヴァルトが怖かったのだろう」

 アンネマリーとハインリヒが、それぞれに赤子を抱き上げあやし始める。それを遠巻きに眺めていたジークヴァルトの眉根がぎゅっと寄せられた。

(未来の義理の息子に嫌われちゃうなんて……将来ふたりの仲に亀裂が入ったりしたらまずいわ!)

 娘婿(むすめむこ)(しゅうと)の争いなど、絶対に避けて通りたい。何かいい手立てはないものかと、リーゼロッテはおろおろと考えを巡らせた。ふと置かれた祝いの品に目を留める。

「ハインリヒ王、こちらをお借りしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、別段構わないが……」

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