嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 戸惑い気味に返される中、リーゼロッテは耳にリボンをつけた可愛いウサギの縫いぐるみを抱えあげた。赤ん坊に贈るには少々大きすぎるサイズの代物だ。

「ヴァルト様こちらを」

 ウサ縫いをジークヴァルトに押し付けて、自分はアヒルの縫いぐるみを手に取った。

「さ、ヴァルト様、いきますわよ」
「行く? 一体どこに行くつもりだ?」
「そうではございません。今こそ腹話術の練習の成果を見せるときですわ!」

 意気込んでアヒルを掲げ持つ。

「オレは練習などした覚えはないが」
「つ、つべこべ言わずにやってくださいませ。王子殿下に泣き止んでいただかないと!」

 初見で何でも器用にこなしてしまうジークヴァルトに嫉妬心を抱きつつ、リーゼロッテはアヒルの羽を片側持ち上げ王子に一歩近づいた。ジークヴァルトも付いてくるよう、さりげなく目くばせを送る。

『はじめまして、わたくしはアヒルのソンチョウですわ。こちらのリボンがとっても可愛いウサギはぷるゃと申します。今日は王子殿下おふたりにご挨拶にまいりました』
「ぷるゃ?」
「ヴァルト様、お口を動かしては駄目ですわ。それにそこは『ヤハ』か『ウラ』にしてくださらないと」

 小声で(たしな)めると、ジークヴァルトは『ヤハ……?』と眉間にしわを刻んだ。

「あとは『プルルル』だけで。失礼にあたりそうですから、今日は『フゥン』と『ハァ?』はお控えくださいませね」
『……ウラ』

 訳が分からないといった顔をしつつも、ジークヴァルトはおとなしく従ってきた。上出来とばかりに頷き返し、気を取り直して王子たちに向き直る。

『怖い思いをさせて申し訳ございません。わたくしたちはアヒルとウサギですから何も心配ございませんわ』
『プルルル』

 甲高い声で縫いぐるみを近づける。双子の王子のみならず、王と王妃もきょとんとした顔をした。

『泣き止んでくださってありがとうございます。本日はおふたりにお会いできて光栄ですわ』
『ヤハ』

 涙の残る瞳を見開いて、王子ふたりはじっと耳を澄ませている。これはイケると確信したリーゼロッテに、ハインリヒがぽかんと問いかけてきた。

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