嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「それは一体何なのだ……?」
『これは腹話術と申しまして、口を動かさずに人形がしゃべっているように見せる技法ですわ』
「縫いぐるみを挟めば公爵の怖さも薄れるというわけね」
『ぷるゃっ』
「逆に空恐ろしいのだが……」

 呆れ声のハインリヒを脇に置き、アンネマリーが赤子のひとりを近づけた。興味津々にアヒルのソンチョウにちいさな手を伸ばしてくる。

『なんてお可愛らしい!』
『ヤハっ』

 今度はウサギのぷるゃに目を向ける。笑顔になりかけた王子は、しかしぷるゃを抱えるジークヴァルトに気づくと、再び大声を上げて泣き出してしまった。

「もういい。やはりジークヴァルトは近づくな」
「も、申し訳ございません。わたくしの技量が足りないばかりに……」
「そういう問題ではないんじゃないかしら?」

 敗北を(きっ)し、悔し涙をにじませたリーゼロッテに、アンネマリーが冷静に突っ込みを入れた。
 仕方なしにジークヴァルトを部屋の(すみ)に追いやった。ソンチョウとぷるゃを抱え、ぽつりと残される姿がなんとも哀れを誘う。

 ぐずつきながらも双子はベビーベッドに戻された。改めて王子たちを覗き込む。リーゼロッテと目が合うと、足をばたつかせていたふたりは嘘のようにぴたりと動きを止めた。

「あら? 今度は急に泣き止んだわね」
「というか、おふたりともわたくしに(おび)えてるんじゃ……?」

 息をつめ、双子は(まばた)きもせずリーゼロッテを凝視している。赤子らしからぬその様子は、緊張をみなぎらせているようにしか見えなかった。

「言われてみればそんな気もするわね。リーゼが綺麗すぎて驚いているのかしら?」
「そんなはずは……」

 アンネマリーの胎内にいた頃も、リーゼロッテが腹に触れると双子は動きをぴたりと止めていた。そんなことを思い出し、やはり嫌われているのではと心配になってくる。
 頭の中で娘婿VS(しゅうと)(しゅうとめ)の争いが勃発(ぼっぱつ)し、再び涙目になったリーゼロッテだった。

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