嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「どうしてこんなことが……」
「国の歴史を紐解いても、このような事例は過去には存在していない」

 不可解な現象に青龍の真意が掴めない。胸に不安が湧き上がり、リーゼロッテはジークヴァルトのそばに身を寄せた。

「恐らくだが、王子たちの未来は定まっていないのだろう。どちらが王となる道を行くのか、龍はいまだ決めかねているのかもしれない」
「おふたりの成長を見て、龍は判断するつもりだと……?」
(おおむ)ねそう言うことだと理解している。今、神託の言葉を待っているところだが」

 ハインリヒは遠い瞳でジークヴァルトの顔を見る。

「これはフーゲンベルク公爵家にも関わることだ。いつ龍から答えが得られるかは分からないが、お前たちもその心づもりでいてくれ」
「王の仰せのままに」

 深く礼を取ったジークヴァルトに、リーゼロッテも慌てて続いた。

「ご歓談中に失礼申し上げます」

 控えめなノックとともに年配の女官が現れた。すぐれない表情でアンネマリーに視線を送る。

「ルイーズ、何かあって?」
「こちらにピッパ様が来られていないかと……」
「ピッパが? まぁ、また抜け出したのね?」
「申し訳ございません。少し目を離したすきにお姿が見えなくなってしまいまして」
「ここには来てないわね。見かけたらすぐそちらに送り届けるわ」

 ルイーズが去る頃、王子たちはすやすやと眠りについていた。起こしてはいけないと、その場はお開きとなり、リーゼロッテたちは離宮から王城の客間へと戻ったのだった。

< 363 / 522 >

この作品をシェア

pagetop