嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
      ◇
 何かを追いかけるように、ピッパは後宮奥深くの廊下をひとり駆けていた。

「アムゼル、駄目よ! 外に出たら凍えてしまうといつも言っているでしょう!?」

 前方に真っ黒い小鳥が飛んでいる。アムゼルは父ディートリヒから(たまわ)った聖獣だ。(くちばし)だけが鮮やかな黄色をしていて、美しい声で(さえず)ることのできるピッパ自慢の黒ツグミだった。
 王妃の離宮につながる渡り廊下から、アムゼルは庭の茂みへと飛んでいってしまう。(すそ)が濡れないようスカートをつまみ上げ、慣れた様子でピッパは石畳の小路を進んだ。

「アムゼル? どこ?」

 気配を追って小路から外れて進む。もはやドレスが濡れるのも気にせずに、ピッパは雪の積もる庭木の間をかき分けていった。

「何かしら……こんなところに(さく)があるわ」

 茂みに埋もれるように柵がずっと先まで続いている。見上げると、(つた)が絡まった鉄柱は相当高くまで伸びていた。
 柵の向こうに飛んで行ってしまったアムゼルが、そこにいた誰かの肩に降り立った。その人物と目が合って、ピッパは物怖(ものお)じもせず声掛けをした。

「アムゼルはわたくしの小鳥よ。あなた、名は?」
「えっ、あっ、はい、ボク……いえ、わたしはマルコです」
「マルコ? 聞かない名ね。どこの家の者?」
「いえ、わたしは貴族ではなくただの神官ですので……」
「神官? どうして神官なんかが後宮(ここ)にいるの?」

 問いかけに、困った顔のままマルコはいつまで経っても返事をしない。柵の間に顔を寄せ、()れたピッパは語調を強めた。

「わたくしが聞いているのよ? 早く何か言いなさい」
「す、すみません! わたしもどうしてここに入れられてるのか良く分かってなくって!」

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