嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
      ◇
 目印の白い布をたどりながら、その先へと進んでいく。
 枝にスカートが取られないよう、慎重に薔薇のアーチをくぐった。

 ――ああ、またこの夢だ。

 マルコは男だというのに、この夢の中では自分はなぜか女性のように振る舞っている。これまで見てきた夢見とも、なんだか違う不思議な夢だ。

 日ごとに内容は変わっていって、今日はマルコの知らない場所へと行くようだ。
 陽射しからして、夏の季節だろうか。
 今日もあの方に会える。胸がときめいて、期待とよろこびを押さえることができない。感情をシンクロさせながら、マルコの意識もその先へと進んでいった。

「ウルリヒ様……!」

 開けた庭の木漏れ日の中に、その人物はいた。

 引き締まった細身の体躯、目に鮮やかな艶めく赤毛、宝玉のごとくの金の瞳。

 顔に刻まれたしわがあってなお、美しさに目を奪われる。陽射しを受ける立ち姿は、神話の中から舞い降りた美神のごとくに思えた。

「待っていたよ、わたしの小鹿」

 優雅な物腰で、こちらへと手を差し伸べてくる。
 頷いてその手を取った。触れる熱と言いようのない高揚感が、マルコの胸をも高鳴らせた。

「今日は砂糖菓子だよ」

 丸い菓子を差し出され、口の中へとそっと押し込まれる。やさしい甘味が広がるのと同時に、指先の触れた唇がわずかに震えた。

「また手伝ってくれるかい?」
「ウルリヒ様の仰せのままに」

 庭のガゼボに歩み寄ると、自らの衣服に手をかける。恥じらいつつも、ためらうことなく薄手のドレスを肩から落とした。
 風を素肌に感じながら、ガゼボのベンチでポーズをとった。いつものように瞳を伏せて、できるだけ動かないようにして。

 ――ああ、ウルリヒ様がわたくしを見てる

 一糸まとわぬこの体を見つめては、画板に絵筆を滑らせていく。視線が外れる隙間を縫って、盗み見るように神々しい姿を目に焼きつけた。

 強めの風が吹き、小さく身震いが起きる。いけない、じっとしていなくては。ウルリヒ様がもっと描きやすいように。

< 369 / 484 >

この作品をシェア

pagetop