嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「戻るまでには終わらせておいて。ルイーズに怒られるから途中で席を立っては駄目よ」
「王妹殿下はどちらにいかれるのですか?」
「こんなにそっくりなんだもの。大丈夫、ばれやしないわ。さ、行くわよ、アムゼル」

 肩に小鳥を乗せたピッパは、会話がかみ合わないまま部屋を出て行ってしまった。
 ひとり残されたルチアは、呆気にとられ練習帳に視線を落とした。数行だけ埋められたそれは、ほぼ手つかずと言っても差し支えはないだろう。

(王妹殿下の命令だものね……)

 筆跡が違うのは一目瞭然だと思うのだが、自分は悪くないはずだとルチアは言われたとおりに筆を取った。
 集中し半ばページが埋まりかけたころ、控えめに扉が叩かれた。

「ピッパ様?」

 びくっとして、返事もせずにひたすら筆を滑らせた。なにしろピッパと自分では体格が違い過ぎる。さりげなくショールで顔を隠しつつ、できるだけ身を小さく縮みこまらせた。
 背中に視線を強く感じ、冷や汗をかきながらルチアは物書きを続けた。真面目に取り組む姿に満足したのか、その人物は近寄ることもなく去っていく。

 息をつき、一度手を止める。身代わりがばれて罰せられでもしたら、たまったものではないと言うものだ。

 残りを一気に片づけ、ルチアはそっと部屋を出た。

(全部終わらせたんだからもういいわよね?)

 途中で席を立つなという事は、裏を返せばそういうことだろう。自分を納得させてから、ピッパの姿を求めて誰もいない廊下を進んでいった。

 突き当たった先で庭に出た。屋根だけがついた渡り廊下が伸びていて、また別の建物まで長く続いている。

「あ、さっきの!」

 羽ばたきの音とともに何かが視界を横切った。あれはピッパが連れていた黒い小鳥だ。ついて行けばその先にピッパがいるかもしれない。ルチアは庭に飛び出した。

「待って……!」

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