嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 飛ぶ影を追いかけ、懸命に小道を駆ける。空を見上げて走っていたら、いつの間にか石畳を外れ茂みへと勢いよく突っ込んだ。

「きゃあっ」

 新雪がふるい落とされ、気づいたら雪まみれの状態だ。戻ろうとするが枝が絡まり、動くこともままならなくなってしまった。

「ああ、もうっ」

 苛立って枝を強く揺らすも、さらに雪をかぶる結果に終わっただけだ。下がれないなら前に進むしかない。ルチアは強引に茂みを押し進んでいった。

 しばらく行くと錆びたアーチがあるのが見えた。生い茂った木々に覆いつくされてはいるが、よく見ると下は石畳になっている。
 アーチはいくつも並べられているようで、所々目印のように白い布が(くく)り付けられていた。
 その古びた布きれを頼りに、ルチアは枝をかき分けて行った。

(どうしてわたしばかりがこんな目に……!)

 それでなくても、ここのところ理不尽な出来事ばかりが続いているルチアだ。自分の運命を呪いたくもなってくる。

 やけくそで踏み込んだ瞬間、絡みつく木々がいきなり途絶えた。たたらを踏んでなんとか倒れずに済む。
 ほっとして顔を上げた先に誰かひとがいて、驚いたルチアは大きく目を見開いた。相手も驚いているようで、しばらく無言で見つめ合う。

「きゅ、急にお邪魔してごめんなさい。わたし人を探してて」
「人を……?」

 我に返り慌てて口を開いた。この状況で不審者は、どう考えてもルチアの方だ。

「どうやってこの中に……?」
「し、茂みに見えても石畳があったの! アーチに白い布がついてて、それをたどってきたらここに出て」
「白い布が?」

 庭木に目を凝らした青年は、自分より少し年上なくらいだろうか。どこか気弱そうな雰囲気で、白い長衣を(まと)っている。

 寒さでくしゃみが出そうになって、ルチアは口元をとっさに押さえた。結局は中途半端なくしゃみとなって、令嬢にあるまじき行為に頬を赤く染めあげる。

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