嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「いけない。そのままでは体が冷えてしまいますね。ひとまずこちらに来てください」

 (いざな)われ、おとなしく後ろを着いて行った。小さな東屋に案内されて、そこでタオルを差し出される。

「ありがとう」
「とりあえず暖炉にあたって温まってください。着替えがお出しできればいいんですが……」

 人のよさそうな青年は困ったように首を傾けた。

「そこまでしてもらわなくても平気だから」
「ではせめて温かいお茶でも淹れますね」

 手渡されたカップに、ありがたく口をつけた。その間にも濡れた髪から(しずく)がいくつもいくつも落ちてくる。

(こんな格好で戻ったら驚かれちゃうわよね……)

 湿ったドレスが張り付いて、それがなんとも気持ちが悪い。すぐにでも脱ぎ捨ててしまいたいが、今は我慢するよりほかはないだろう。

 ふと視線を感じ、ルチアは青年に目を向けた。ぱっと顔を逸らされ、やはり見られていたのだとそう思った。

 気づかなかったふりをして、再びカップに口をつける。するとまた視線を感じた。ちらっと見ると、青年は今度も明後日(あさって)の方を向く。
 居心地悪くて、ルチアは急いで残りを飲み干した。

「これ、ありがとう。ずいぶんあったまったから」
「ならよかったです」

 手渡す際に、ルチアの指が青年のそれに触れた。びくっと引っ込められて、ふたりの手を離れたカップは床で見事に砕け落ちた。

「ああっ、すみません! お怪我はありませんか!?」
「ええ、わたしは大丈夫」

 わたわたと青年が割れたカップを(ほうき)でかき集める。邪魔にならないようルチアは一歩後ろへと下がった。

「きゃっ」
「危ない!」

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