嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
      ◇
(デルプフェルト家関連は大体こんなものか……)

 遂行中の任務や人員の整理など、引き継ぐべきものは大方片付いた。これでいつ自分がいなくなったとしても、さして大きな混乱は起こらないはずだ。

 カイとルチア、対となるラスとオーンの託宣が出会いを果たしたのだ。
 歯車は既に動き出してしまっている。()()()()が来るのは、そう遠くない未来と言うことなのだろう。

 ルチアは異形に殺される宿命とともに、カイを星に堕とすための役割を与えられている。

(異形からルチアを守ることで、オレは星に堕ちる)

 その瞬間に龍から鉄槌(てっつい)を受け、カイは禁忌の異形の者となり果てる運命だ。

 ――このままずっと、ルチアに会いに行かなければいいのかもしれない

 そんな気弱なことを考えたこともあった。だが許されるはずもない。長い歴史の中で託宣が守られなかったことなど、一度たりともなかったのだから。

 途方もない年月と労力をかけ、これまで龍の託宣を調べ上げてきたカイだ。この国でカイ以上に託宣の知識を持ち合わせた者はいないに違いない。

(となると、だ。結局はルチアの託宣も(はば)むことはできないってわけか)

 まったくもって骨折り損としか言いようがない。カイが星に堕ちたあと、ルチアは異形に(あや)められてしまうのだから。

 それでもルチアとカイは、この宿命から逃れることなどできはしない。

 馬を駆り、王都へと向かう。最近はイジドーラにはできるだけ頻繁に顔を見せに行くようにしている。イジドーラの前だけは、最後まで笑顔であろうとそう決めているカイだった。

 街道の途中で、何やら立ち往生している馬車が目に留まった。車輪がぬかるみにはまって抜け出せなくなっているようだ。

「失礼。よければ手をお貸ししましょうか?」
「これは騎士様。助かります」

 木片を探し、車輪の隙間に敷き詰める。馬に引っ張らせるのと同時に、御者とともに力の限り後ろから馬車を押し出した。

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