嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
◇
先を歩くディートリヒはどう見ても不機嫌だ。
にもかかわらず、今日は本気でそこまで見送るつもりでいるらしい。
「イジィの前でオレを狭量な男みたいに言うな」
「決してそのようなつもりは」
軽く肩を竦めると、面白くなさそうに睨みつけられた。ここまであからさまだと、いっそ清々しく思えてくる。
「そんな顔をしないでくださいよ。イジドーラ様を任せられるのは、ディートリヒ様以外おられないと思っているんですから」
カイの言葉にディートリヒは足を止めた。
一瞬で様変わりした顔つきは、かつて彼が玉座で見せていたものだ。
「……時は近いのか?」
「それほど遠い話ではないかと」
「そうか」
低い声で返すと、ディートリヒはどこか遥かを見やった。
「カイ・デルプフェルト。オレが言うまでもないことだが――最期までお前らしく在れ」
「確とこの胸に刻みつけておきましょう」
前の王に向け、深々と礼を取る。
だが内心では笑いが漏れた。言い回しは違えどクリスティーナに言われた言葉と大差ない。これを似た者親子と言うのだろう。
「ディートリヒ様。オレが言うまでもないことですが、イジドーラ様のこと、どうぞこれからもよろしくお願い申し上げます」
「ふっ、本当に言うまでもないな。だがその願い、この命に代えても叶え続けると誓おう」
「ありがたきお言葉」
今度は心からの礼を取った。
(これで思い残すことは何もない)
カイにとってイジドーラは唯一のよりどころだった。イジドーラなくして今の自分はあり得ない。呪われた身でなかったならば、イジドーラのために生涯この身を捧げたことだろう。
だがカイは出会ってしまった。ルチアという抗えない運命に。
先を歩くディートリヒはどう見ても不機嫌だ。
にもかかわらず、今日は本気でそこまで見送るつもりでいるらしい。
「イジィの前でオレを狭量な男みたいに言うな」
「決してそのようなつもりは」
軽く肩を竦めると、面白くなさそうに睨みつけられた。ここまであからさまだと、いっそ清々しく思えてくる。
「そんな顔をしないでくださいよ。イジドーラ様を任せられるのは、ディートリヒ様以外おられないと思っているんですから」
カイの言葉にディートリヒは足を止めた。
一瞬で様変わりした顔つきは、かつて彼が玉座で見せていたものだ。
「……時は近いのか?」
「それほど遠い話ではないかと」
「そうか」
低い声で返すと、ディートリヒはどこか遥かを見やった。
「カイ・デルプフェルト。オレが言うまでもないことだが――最期までお前らしく在れ」
「確とこの胸に刻みつけておきましょう」
前の王に向け、深々と礼を取る。
だが内心では笑いが漏れた。言い回しは違えどクリスティーナに言われた言葉と大差ない。これを似た者親子と言うのだろう。
「ディートリヒ様。オレが言うまでもないことですが、イジドーラ様のこと、どうぞこれからもよろしくお願い申し上げます」
「ふっ、本当に言うまでもないな。だがその願い、この命に代えても叶え続けると誓おう」
「ありがたきお言葉」
今度は心からの礼を取った。
(これで思い残すことは何もない)
カイにとってイジドーラは唯一のよりどころだった。イジドーラなくして今の自分はあり得ない。呪われた身でなかったならば、イジドーラのために生涯この身を捧げたことだろう。
だがカイは出会ってしまった。ルチアという抗えない運命に。