嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「で、今度はどこに逃げようとしてたの?」
「ちがっ、わたしは王妹殿下を探してただけよ!」
「ピッパ様を?」

 それがどうして庭で震える事態に陥るというのだろうか。呆れ半分に思うも、泣きはらした様子のルチアにカイは人好きのする笑顔を向けた。

「ま、いいや。詳しい話はあとで聞くよ」
「えっ、ちょっとっ」

 有無を言わさず横抱きに抱えあげる。勝手知ったる敷地内だ。人目につかない最短ルートをたどり、自分にあてがわれている部屋へと連れて行った。

「ここは?」
「オレの私室。とりあえず風呂入って体温めて。着替えは適当に出しておくから」

 手早く暖炉に火を起こし、あまり使ったことのない小さめのバスタブに湯を張った。

「オレちょっと出るけど、ルチアはゆっくりしてて」
「どこ行くの?」
野暮(やぼ)用。大丈夫、すぐ戻るから」

 不安げなルチアを残し、カイはひとまず女官のルイーズの元に向かった。ルチア保護の報告と、今日起きた大方のことを改めて把握する。

(次はルチアを連れ出すための根回しだな)

 必要なすべてを片付けると、浮かれ気分でルチアの待つ部屋へと歩を進めた。自分でも笑えるくらい足取りは軽やかだ。
 今や、(きた)るべき日を待つだけの状態となった。最後くらい好き勝手やっても許されるというものだろう。

「ルチア、馬には乗れる? 今すぐ出られそう?」
「馬? 相乗りならお義父様にしてもらったことあるけど……」
「そっか、体きついなら馬車も出せるし。馬で行った方が早く着くけどどうする?」
「どうするって、一体どこに行くつもりなの?」
「ふたりきりになれるトコ」

 にっこり告げると、ルチアはぽかんと大口を開けた。

「馬! 馬で行く……!」

 前のめりに答えたルチアを乗せて、カイは馬を駆り王都を離れた。

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