嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 何気なくかわす会話に、うれしさがこみ上げる。と同時にカイのことを何も知らないでいたのだと、そんなことをルチアは思った。

「お茶はわたしが()れるね。カイはそこで座ってて!」

 淑女教育で習ったことを思い出しながら、茶葉を温めたポットに放り込んだ。お湯を入れしばらく待ってから、並べられたふたつのカップへと注ぎ入れる。
 色も香りもなかなかよさそうだ。意気揚々とルチアはカイに差し出した。

「どう? 美味しい?」
「……ルチアさ、どうやったらこんな高級な紅茶、ここまで不味(まず)く淹れられるの?」
「うそっ、わたし教えられた通りに淹れたのに!」

 慌てて自分の分を飲んでみる。その途端、口の中に広がった渋みに、ルチアはぎゅっと眉根を寄せた。

「まっず……!」
「はは、紅茶って抽出中に温度が下がると、渋みが出るって習わなかった?」

 言いながら、慣れた手つきでカイは紅茶を淹れなおした。それをひと口含んでから、ルチアにも飲むよう促してくる。

「うそ、美味しい……」

 とても同じ紅茶とは思えない。ほんのり甘味が感じられ、舌触りもまろやかだ。

「初めて淹れる茶葉にしては上出来かな? 茶器の形とか水の状態なんかを考えて、葉っぱの量とか蒸らし時間とか、いろいろ変えてみるともっと美味しくなるよ」
「カイってば、いつもそこまで考えて淹れてるの? 信じられない……」
「ルチアが大雑把過ぎるだけでしょ」

 ははと笑うと、カイはルチアの手を取ってきた。

「腹も膨れたし、そろそろ向こうに戻ろっか」

 目を向けた先は、ずっと籠っていた寝室だ。
 頬を染めながら頷くと、ふたりして乱れたままのリネンに沈み込んだ。

 
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