嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「確かに受け取った。早急に吟味し、返答の書をしたためる。それまでは別室で休むがよい」

 使者を下がらせ、すぐさま書に目を通した。簡潔に書かれた文章は、不穏()つ見過ごすことはできない内容だった。

 ――オーランウヴスが揺れておる!
 ――かの国は、(いにしえ)より跡目(あとめ)争いが絶えぬゆえな!
 ――(めかけ)の数はほどほどにせねばならん!

 再び沸いた不謹慎な笑いに、ハインリヒは不愉快そうに顔をしかめた。歴代の王たちの冗談は品性のないものが多すぎる。

 オーランウヴスは東部の山脈を越えた先にある隣国だ。国交はなく、長い歴史の中でオーランウヴスからの侵略の試みが幾度もなされてきた。
 その名残(なごり)が辺境の砦であり、先々代王・フリードリヒの時代にも小さな侵攻を経験している。有事の際に機能できるよう、今でも必要な人員配備を続けさせていた。

(それがここに来て、新たな動きをみせているのか……)

 険しい山脈を挟んでいるとはいえ、国に通ずるルートがないわけではない。雪解け以降にはさらなる監視が必要である(むね)が書状には綴られていた。

 冬の間に山越えを企むのは自殺行為だ。さすがにこの時期を狙って攻め入られることはないだろう。こういったときは雪深い我が国に感謝するしかない。
 しかし極寒の時期の備蓄の確保も頭が痛いところだ。ひと冬ごとに目減りする王城の備蓄は、このままでは近い将来、不足分を(まかな)えなくなる事態に陥りかねない。

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